2020年9月20日日曜日

書評は「湯川ポテンシャル。」で

 2012年からこのブログで書評を書いてきましたが,2020年10月から,私のメインのブログである「湯川ポテンシャル。」の方で書くことにしました。ブログを一つに統一します。

湯川ポテンシャル。: https://yukawa-potential.blogspot.com/

書評を読んでくれていた方(はそんなにいないと思いますが:笑),今後は「湯川ポテンシャル。」の方をご覧くださいませ。


2020年9月17日木曜日

情動はこうしてつくられる:脳の隠れた働きと構成主義的情動理論

 リサ・フェルドマン=バレット(著)高橋洋(訳) 2019 紀伊國屋書店

もちろん,バレットの構成感情理論(本書では構成主義的情動理論)のことは知ってはいましたが,ほんのさわりを知っていただけで,そうかこういう話になるのか,ということを今更ながら本書を読んで良く分かりました。こうして一冊の本として,一般書として書かれると,説明もより具体的で分かりやすく,また,この理論の意味するところの広がり(あるいは深さ?)が非常に良く理解できました。歴史的名著であり,歴史的翻訳書だと思います。日本語訳も非常に読みやすいです。

内容的には,まさに「衝撃」「革命」「パラダイムシフト」「コペルニクス的転回」といった言葉が浮かんできます。いやはや,もっと早い段階からちゃんと向き合ってバレットの理論をよく理解しておくべきだった。いや,ある程度は理解していたつもりだったけど,この本を読んで,全く理解が浅かったことが分かりました。大平さんや余語さんがかなり前から説明してくれてたのになぁ(笑)。自分の力量不足を悔やみます。

でも,この本が出て,読んでみようという気になり,読んでみて,良かった。バレットが主張していることの意味がよく分かりました。感情研究者でなくても,世界を(人間を)理解したいと考えている人なら絶対に読んでおいた方が良い,歴史的名著の一つです。

2020年8月24日月曜日

映像と身体

 立教大学映像身体学科 2008 せりか書房

前からずっと不思議に思っていました。「映像身体学科」。立教大学の現代心理学部の中にあります。つまり,現代心理学の一つの学科です。なぜここに「映像身体学」なるものが入っているのか,まずこれが疑問でした。映像身体学は現代心理学なのだろうか。

もう一つの疑問は,なぜ映像と身体なのか。ただこれはたぶん「イメージ(表象)」という概念を結び目として,身体・イメージ(表象)・メディアという枠組みは,早稲田の文学部にもあります。東京大学にも,表象文化論教室があります。でもどれも,心理学の枠内ではありません。

そこで,そういう枠組みが一体どういうことに焦点を当てて,どういう問題を考えているのか知りたくてこの本を買って読んでみました。第一の疑問はおそらく解かれないとしても(映像身体学が心理学の一部とは到底思えないから),第二の疑問には答えてくれるだろうと思って。

しかしその期待は外れます。結局この本に書かれていることは身体学と映像学であり,残念ながら,決して「映像身体学」のことではありません。一体何なの「映像身体学」。かろうじて後半,映像と身体の話が絡むものもありますが,大半は身体学と映像学の話であり,つまりは寄せ集めです。これで良いのだろうか。ま,立教大学や当の先生達が良ければそれで良いのか。

なお,身体学と映像学それぞれの話はどれも面白いものでした。だから無理矢理「映像身体学」にしなくても良い様な気が,やっぱり,します。新しいモノを作るというよりは,お互いがお互いを制限してしまって,無理矢理感がどうしても拭えません。メディア表象学科とか,身体表象学科の方がまだ良かったのではないでしょうか。そんなネーミングは十分考えた上であえて「映像身体学科」にしたんでしょうけれど(笑)。

そもそも,「映像」をどう定義しているのかが,読んでいてずっとよく分からない。「映像」って?映画?フィルム?写真?絵画?イメージ?表象?心象?二次元?三次元?ってか,視覚で捉えるものなら何でもアリなのか。何でもアリで学問(学科)なのか。学の条件って,学科の条件って,何だ?何でもアリなのか。

でも,繰り返しますが,各章の論考はいずれも,読んでいて面白いです。気になるのは,なんでこれらを「映像身体学」なんてのにまとめようとするのか,です。その意図が全く伝わってこないし,伝えようとしていない(あえて回避しているような,あえて曖昧にしているような)ところが,どうしても腑に落ちませんでした。

2020年8月22日土曜日

人工感情:善か悪か

 福田正治 2018 ナカニシヤ出版

『感情を知る:情動学入門』の福田先生の本。来るAIの世界を想像する「未来学」の本なので,福田先生がさてどんなことを語るのかと読み始めましたが,なんとなく,書かれている情報や論理に新鮮味もなく,どこまで真実でどこまで噂レベルの話なのかもよく分からず,しばしばよく聞かれる危機感やリスクが散りばめられている割に話の筋にあまり深まりや独自性はなく,残念ですが,読んでいてワクワクしなかったので,読むのを止めました。

認知日本語学講座第4巻 認知意味論

 大月実・進藤三佳・有光奈美 2019 くろしお出版

認知意味論といっても,特にカテゴリー論(命名論,色彩語),意味変化・意味拡張,否定の話。専門書だからか,何かを説明するための用語や概念の説明がなく(それは既知だという判断か),とにかく全体的に分かりにくい。ただ,専門の研究者から見ればきっと,情報が詰まっている良い本なのかもしれません。

それから思うに,自分の興味がメタファーにあるので,内容的にちょっと的が違うせいもあるかもしれません。読みにくくて途中で断念しました。