伊坂幸太郎 2015 光文社
最初の4分の1ぐらいのところで,もう読むのを止めようかと思いました。そのくらい,読むに耐えない暗黒描写。人間の暗部を,よくもまぁこんな風に文字にできるなというぐらい,えぐい。
そこで一つ思ったことがあります。小説は,映画よりも,よっぽどリアルだ,ということ。
これはすでにどこかの誰かが気がついて,映画論とか小説論とかで語られている定番な事実なのかもしれないけれど,映画ってのは,俳優が演じますね。で,たしかに,良い演技悪い演技ってのがありますが,俳優の良い演技に加えて,監督や脚本家によるリアルな撮影と演出,実写であるという事実にさらにCGのような映像技術も加わったリアルな映像が後押しして,その映画に感情移入できればかなりリアルです。これは間違いない。
ですが,それでも俳優は俳優です。我々は俳優であることを暗に知っています。つまり,これは演技である,虚構である,フィクションである,ということをメタには分かっているわけです。映像がリアルな分,俳優が演ずることで虚構性が担保されています。
一方,小説はどうでしょうか。小説は,活字を追って読み進め,その活字から意味を読み取り,個々人の中で心象として物語を,場面を,イメージ化していく。刺激は,活字だけです。俳優は,いません。ですから,心の中に構築される世界に限れば,フィクションという記号はなく,極めてリアルです。頭の中のイメージに出てくる登場人物は皆,その人物本人であり,決して俳優の演ずる「役」ではありません。
もちろん,これは小説だ,本だ,単なる活字だというメタ認知が働けば,心的に構築された世界は虚構として崩れ去ります。ですから,映画も小説も,冷静に考えればどちらも虚構です。では,一体どちらがリアルに心に直接刺さってくるかというと,受動的に映像として受け止める映画よりも,むしろ,能動的に活字からイメージを構築する小説の方が,心理的には「来る」のではないかと,思ったわけです。
それは,登場人物が俳優の演ずる「役」でしかない映画と,登場人物が登場人物そのものの「本人」である小説との,違いです。
加えて,映像という視覚情報に頼った映画は,多くの情報がすでに用意されている分,脳があんまり働いていない気がしますが,活字という文字情報にしか頼っていない小説は,脳をフル回転して足りない視覚イメージを作り上げている(補っている)分,余計にリアルに「脳」が感じるのではないかと思うのです。
というわけで,伊坂小説は,心に痛い。でも,そこんところを超えて,ちょっと我慢してでも読み進めると,それなりに回収してくれます。だから,僕と同じように途中まで読んで心が痛くなっても,だまされたと思って最後まで読んでみてください。それなりに,救われます。
2015年7月1日水曜日
2015年6月23日火曜日
天野祐吉のCM天気図傑作選
天野祐吉 2013 朝日新聞出版
天野祐吉さんは,2013年10月20日に亡くなりました。で,この本,12月30日に出てます。速い。それだけこの連載を重んじてたというわけでしょう。朝日新聞。僕もときどき読んでました。
1984年4月から連載開始,亡くなる直前の2013年10月16日の連載まで,約30年間,毎週コラムを書き続ける,それも,ほぼ同じ感性と視点でもって,ブレずに書き続けるってのは,ホント,凄いことだと思います。
CMを通して,時代も覗けて,面白い本です。ああ,そういえばそんなCMあったよな,とか,そんなCMあったっけ?なんてことを思いながら読むのもまた,楽しい。
天野祐吉さんは,2013年10月20日に亡くなりました。で,この本,12月30日に出てます。速い。それだけこの連載を重んじてたというわけでしょう。朝日新聞。僕もときどき読んでました。
1984年4月から連載開始,亡くなる直前の2013年10月16日の連載まで,約30年間,毎週コラムを書き続ける,それも,ほぼ同じ感性と視点でもって,ブレずに書き続けるってのは,ホント,凄いことだと思います。
CMを通して,時代も覗けて,面白い本です。ああ,そういえばそんなCMあったよな,とか,そんなCMあったっけ?なんてことを思いながら読むのもまた,楽しい。
2015年6月12日金曜日
怖い俳句
倉阪鬼一郎 2012 幻冬舎新書
確かに怖い俳句が並んでいるけれど,その怖さが一様ではなく,かなり広い意味で「怖い」という言葉を用いて,色々な句を入れています。前書きにもあるように,概ね時代に沿って並べているので,怖さがバラバラなところが逆に浮き彫りになってしまった感アリ。だから,まず,怖さの種類別に句を分け(たとえば,幽霊,虫,死,自然,実存とか),その中で時代順に追っていく構成にしていたら良かったかなと思います。一方で,僕自身が句を味わう素地がないこともまた,良く分かりました(笑)。新書なので,一つ一つの句について,もっと初歩的な説明を付けてくれてるのかなと思いきや(前書きには句評の専門用語は避ける,みたいなことを書いてはいましたが,それでも),味わい方以前にそもそもその短い文字数で書かれている句そのものの言葉の意味自体さえも即座に分からないものがときどきあり,それを解読することに労するので,味わうどころではない(味わう以前の問題である),ということが,良く分かりました。途中まで読んで終了。
確かに怖い俳句が並んでいるけれど,その怖さが一様ではなく,かなり広い意味で「怖い」という言葉を用いて,色々な句を入れています。前書きにもあるように,概ね時代に沿って並べているので,怖さがバラバラなところが逆に浮き彫りになってしまった感アリ。だから,まず,怖さの種類別に句を分け(たとえば,幽霊,虫,死,自然,実存とか),その中で時代順に追っていく構成にしていたら良かったかなと思います。一方で,僕自身が句を味わう素地がないこともまた,良く分かりました(笑)。新書なので,一つ一つの句について,もっと初歩的な説明を付けてくれてるのかなと思いきや(前書きには句評の専門用語は避ける,みたいなことを書いてはいましたが,それでも),味わい方以前にそもそもその短い文字数で書かれている句そのものの言葉の意味自体さえも即座に分からないものがときどきあり,それを解読することに労するので,味わうどころではない(味わう以前の問題である),ということが,良く分かりました。途中まで読んで終了。
2015年6月9日火曜日
書楼弔堂
京極夏彦 2013 集英社
ようやく読めました。あっという間に読めました。あれこれ他の本を読んでいて,楽しみに後回しにしていたために,今に至ってしまいました。いや,やはり,京極夏彦。傑作です。1ページ繰るごとに,ワクワクする。弔堂。シリーズ化されるのであれば,期待大。京極堂の黒い着流しに対し,こちら弔堂は白い着流し。死に装束である。
しかし,本書の最後,語り手というか物語の視点を提供している高遠彬がどこかへいなくなってしまうけれど,まぁ,次の作品ではまた別の人が出てくるのかね。中善寺秋彦の祖父?であろう人も最後に出てきたし,何かの伏線か。
とにかく,京極好きなら必読。いや,京極ファンは京極作品なら何でも読むんだろうけれど,やはり,僕は,彼のやたら怖い(厭な,不吉な)だけの話よりも,京極ならではのこういうからくりのある話の方が,好きです。
ようやく読めました。あっという間に読めました。あれこれ他の本を読んでいて,楽しみに後回しにしていたために,今に至ってしまいました。いや,やはり,京極夏彦。傑作です。1ページ繰るごとに,ワクワクする。弔堂。シリーズ化されるのであれば,期待大。京極堂の黒い着流しに対し,こちら弔堂は白い着流し。死に装束である。
しかし,本書の最後,語り手というか物語の視点を提供している高遠彬がどこかへいなくなってしまうけれど,まぁ,次の作品ではまた別の人が出てくるのかね。中善寺秋彦の祖父?であろう人も最後に出てきたし,何かの伏線か。
とにかく,京極好きなら必読。いや,京極ファンは京極作品なら何でも読むんだろうけれど,やはり,僕は,彼のやたら怖い(厭な,不吉な)だけの話よりも,京極ならではのこういうからくりのある話の方が,好きです。
2015年5月23日土曜日
酒場詩人の流儀
吉田類 2014 中公新書
BS-TBSの「酒場放浪記」が大好きである。出てるDVDは全部持っている。そんな吉田類さんのエッセイ集。俳人でありイラストレーターであり,本書を読めば分かるように,登山家です。本書は,「新潟日報」と「北海道新聞」に連載していたエッセイをまとめたものなので,新潟や北海道にちなんだ話題が多い。そこに生まれ故郷の四国の話が絡む。もちろん酒の話題はたんまり出てくるわけですが,酒場の話はそんなに出てこない。むしろ,山の話,川の話,草木の話,動物の話が多い。だから,読後感は,「あれ,これ登山家のエッセイ集だっけ?」という感じ。吉田類ファンにとっては,吉田類さんの人となりが分かって,だからほとんど登山エッセイだけど,それでも面白い。
BS-TBSの「酒場放浪記」が大好きである。出てるDVDは全部持っている。そんな吉田類さんのエッセイ集。俳人でありイラストレーターであり,本書を読めば分かるように,登山家です。本書は,「新潟日報」と「北海道新聞」に連載していたエッセイをまとめたものなので,新潟や北海道にちなんだ話題が多い。そこに生まれ故郷の四国の話が絡む。もちろん酒の話題はたんまり出てくるわけですが,酒場の話はそんなに出てこない。むしろ,山の話,川の話,草木の話,動物の話が多い。だから,読後感は,「あれ,これ登山家のエッセイ集だっけ?」という感じ。吉田類ファンにとっては,吉田類さんの人となりが分かって,だからほとんど登山エッセイだけど,それでも面白い。
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