2015年9月16日水曜日

感じる力をとり戻しココロとカラダをシュッとさせる方法

藤本靖 2015 マガジンハウス

本書,藤本先生からご献本いただきました。ありがとうございます。

まず第一印象は,とにかく,分かりやすく伝えたい!という藤本先生の思いが全体から伝わってきます。その伝えたい思いの裏側には,人間の身体が持つ可能性の素晴らしさ,面白さが,あります。

藤本先生はロルファーなので,本書は全体的に「筋膜」で説明されていますが,背景の理屈が難しければそれは端折って,とにかく,「こうすると緩む」「ああするとリラックスする」という,インプットとアウトプットだけでも十分面白いし,役に立ちます。

中でも,「呼吸」の使い方,そして,緩めたいところ,ワークしているところへ息を持って行くときに,息がそっちへ自然に流れていく(「呼吸の波が届く」)と「おもう」と表現されているところが,良かった。「意識する」では強いし,「イメージする」では弱い。藤本先生の経験では,「おもう」と言うのが一番合っている,ということでした。なるほど。

加えて,特に最終章で強調されている,ココロとカラダの関係。カラダを使ってココロをほぐす,緩める,調える,シュッとさせる。そういうことだと思うのですが,これは本当に,僕が目指している,やろうとしていることと全く同じです。僕は心理屋なので,ココロから入ってカラダに至っているわけですが,藤本先生は逆に,カラダから入ってココロに至っている,ということでしょうか。

本書のテーマは,「身体を感じること」です。僕が普段使っている言葉でいえば,身体への気づき,でしょうか。感じるようになることで,自然とカラダは整ってくる,ひいてはココロも整ってくる。そういうワークがいろいろと詰まっています。

2015年9月14日月曜日

ひとりぼっちを笑うな

蛭子能収 2014 角川Oneテーマ21

「蛭子さん」の生き様をしたためた新書。たしか去年話題となり,ようやく手に入れて読みました。ベストセラーのようです。

この本にもよく登場しますが,『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』が好きで良く見ています。そこに登場する蛭子さんのノホホン振りが好きで,そんな蛭子さんが何を考えているのか興味があり,読みました。

なるほどその通りと思える,蛭子的生き方,実際にここまで徹底してできるかどうかは別として,大いに参考になります。僕もどっちかというと独りで自由にやる方が良いから,共感できます。

2015年9月10日木曜日

捏造の科学者

須田桃子 (2015) 文藝春秋

小保方氏のSTAP事件の全容を,毎日新聞の科学記者ならではの専門的な視点で緻密に解きほぐし,時系列で追っかけた,ノンフィクション。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

ちょうどホノルルに渡航する前に事件(論文発表)が起き,事件の経過はネットで眺めていました。笹井芳樹氏の訃報も向こうで知りました。

この事件の舞台となった世界トップクラスの研究者陣と自分とでは,住んでいる世界が天と地の差ほど違いますが,同じ科学者・研究者として,この事件が起こった研究業界の背景や,当の小保方氏の言動や振る舞い,彼女に関わる周辺の指導的立場にあった研究者の言動や振る舞いなどなど,反面教師として,とても勉強になる意義深いドキュメンタリーレポートでした。

研究者は,この本,読んで損はありません。というか,むしろ,読むべきです。STAP事件を,単なる事件として見過ごすのではなく,教訓として,活かしましょう。

加えてこの事件は,社会心理学的な事例としてもまた,勉強になります。人はなぜ信じるのか,人はいったん信じたものをなぜ捨てられないのか。それを考える一つの事例になると思います。


ちなみに笹井氏は,学年はずいぶん違いますが私の高校の先輩であり,同じ校舎に3年間通ったんだなと想像すると,リアリティを強く感じ,その分,強い悲しみを覚えます。なんとも残念でなりません。ご冥福をお祈りします。

2015年8月28日金曜日

教団X

中村文則 (2014) 集英社

分厚いですが,その分,読み応えあります。中村文則氏は,芥川賞の又吉直樹氏がかねてより絶賛していて,その又吉氏のエッセイか何かで見て,以前,『銃』を読んだことがあります。『銃』は良かった。なんていうか,主人公の内面を丁寧に描写する感じが,良かったです。

今回もまた,登場人物たちの内面を丁寧に描いています。それから,あえてそうしているんだろうけれど,とにかくやたらセックス描写が多い(笑)。今回は,そういうテーマだからね。そうなんだけど,予想以上に紙面を割いています。

新興宗教がテーマの小説に,篠田節子『仮装儀礼』というのがあって,これはものすごく面白かった。どちらも人間臭さを扱ってるわけですが,『仮装儀礼』が新興宗教への信仰や洗脳・カルト化みたいなところに焦点を当てているのに対して,どちらかというとこの『教団X』は(宗教を扱ってはいるけれどもそれを使って)宇宙とは何かとか生きるとは何かとか意識とは何かとか感情とは何かとか,そういった人間という存在そのものにテーマがあります。

2015年8月18日火曜日

Tao Te Ching: The Definitive Edition

Lao Tsu (translated by Jonathan Star) (2001) Tarcher Cornerstone

『老子道徳経』全81章の英語版です。英語版はたくさん出ていますが,このJonathan Starの訳は,内容的にも正確かつ詩的にもすばらしい,と解説にあります。他の英語版を読んだことがないのでなんとも言えないですが,少なくとも,漢語の原文やその読み下し文などよりは数段,意味が分かるし,中身が入って来ます。

なんで英語版を読んだかと言えば,翻訳家であり詩人でありタオイストである加島祥造先生が『道徳経』を訳していて,その訳がとても良くて,その加島先生が,老子や道教をやるようになったのが,最初,英語訳の『道徳経』を読んで感動したから,という話を書いていたからです。

その話が頭のどこかにあって,ちょうどホノルルのアラモアナセンターにある大きな本屋で武術本やら仏教・道教本やらを物色していたときに思い立ち,見つけて買った,という次第です。さて,英語訳だとどうなんだろうと,僕も体験したかったからです。

実際,加島先生が読んだのはJonathan Starの訳ではないと思いますが(タオ関連の本がすでに1993年に出ているから),加島先生の言う通り,読み下し文やその現代語訳なんかよりも,数段,読みやすかったです。加島先生の日本語訳(例えば『「老子」新訳』2013)はとても詩的であり,このJonathan Starの訳もまた詩的であり,両者は似ています。

もしかしたら,先に加島先生の訳を読んでいたから,このJonathan Star訳も,すーっと読めたのかもしれません。いずれにせよ,このJonathan Star訳は,オススメです。