2016年3月15日火曜日

劇画ヒットラー

水木しげる 1990 ちくま文庫

水木しげるの戦争漫画。ヒトラーが画家になろうとウィーンに下宿しているところから,ナチス党の総統となり,ヨーロッパで戦争を始め,最後は地下壕で自殺するところまでを,淡々と描いています。ユダヤ人虐殺は,ヒトラーやナチス絡みでは必ず出てきますが,この物語では冒頭に出てくるだけで,後は,ヒトラー中心に誰と交わり,どうやってヨーロッパの国々や歴史が動いていったかだけを描いています。この,淡々とした感じは,おそらく水木漫画の特徴か,あるいはもしかしたら昭和の劇画の特徴なのか,はたまた伝記漫画の特徴なのか分かりませんが,いずれにせよ,セリフ付きの人物と風景とが連続する,そういう漫画です。

2016年3月14日月曜日

蛭子の論語

蛭子能収 2015 角川新書

「論語」を読みながら,蛭子氏が感想を述べる,という体裁の本。何か語るテーマがないと蛭子氏も語りにくいので,そこに「論語」を持ってきた,という本です。だから,別に「論語」じゃなくてもよい。「老子」(道徳経)でもいい。でも,道教だと蛭子氏の世界と近いので,あえて儒教を持ってきたのかもしれない。そうすれば,蛭子氏の世界が対比的により鮮明になるから。

2016年3月5日土曜日

今を生き抜くための70年代オカルト

前田亮一 2016 光文社新書

オカルト好きにとって,70年代のテーマのおさらい的な本。特に目新しい掘り出し情報はないけれど,71年生まれである私にとっては,懐かしいテーマがさらえて面白かったです。

2016年2月29日月曜日

瞑想を始める人の小さな本:クヨクヨとイライラが消えていく「毎日10分」の習慣

パトリツィア・コラード(著) Lurrie Yu(訳) 2015 プレジデント社

マインドフルネスに関する,コンパクトで,装丁やイラストも綺麗な本です。大きさも手のひらサイズで,わずか100ページ弱。マインドフルネス瞑想を始めて見ましょうと誘いかける,優しい本です。

ただ,思うに,もしこれが本当の意味で全くの初心者が読んだら,掲載されているエクササイズのいくつかは,文章を読んだだけではどうやって良いのかよく分からないし,マインドフルネスや瞑想などの経験のある人の指導がないと,どういう状態を指しているのか分かりにくいところがある,のではないかと思います。

瞑想エクササイズは,シンプルな方が良いと,個人的には思います。だから,本書の中でも,簡単な(ただし,それを続けようと思うと難しかったりする)エクササイズは非常に良いですが,身体の各所を観察するようなエクササイズは,早々に読んでできるようなものではないと,僕は個人的には思います。身体感覚って,難しいよ。

だから,この本は,コンパクトで文章も少なく,イラストも装丁も綺麗な,かわいらしくて取っつきやすい本ですが,マインドフルネス瞑想としてよく用いられるワークが,一通り,書かれている感じです。ものによっては,だから,難しい。

2016年2月27日土曜日

総員玉砕せよ!

水木しげる 1995 講談社文庫

2015年末,「水木しげる」が亡くなりました。説明の必要のない,かの手塚治虫に並び称される,日本の偉大な漫画家です。小さい頃,あのおどろおどろしいゲゲゲの鬼太郎を描いた漫画家に左腕がないことを知って,なぜ腕がないのかが理解できず,薄暗い恐怖感のようなものを覚えたのを記憶しています。

理由は大人になって後から知るわけで,それは戦地で吹き飛ばされたから。つまり,水木しげるは第二次大戦で徴兵されて激戦地に向かい,終戦を迎えて復員した傷痍軍人なのであり,この本は,その,水木しげるの戦争(戦場)体験に基づいた戦記物です。

妖怪漫画もそうですが,独特のあの細かい書き込みの絵を,右手一本で描く。描くことへの鬼気迫る執念。それは戦地で亡くなった戦友たちの怨念でしょうか,そんなものを,左手をラバウルに置いてきた代わりに右手に背負い込んできたかのようにも,思えます。まるで水木の右手が独りでに絵を描いているかのように。

この漫画は,淡々と前線の,それもジリ貧の戦力の日本帝国軍の,明日も知れぬ前線の日々が描かれていて,だからとてもリアルで,心が痛くなります。本当に行ったことのある人しか描けない,想像では絶対に描けない,そういう当時の様子が,描かれています。