2017年10月13日金曜日

禅思想史講義

小川隆 2015 春秋社

平易な日本語と,古典の分かりやすい現代語の訳や解釈もあいまって,とても分かりやすく読みやすい本です。やはり,本格的な学術書となると,漢語や古語が難しいし,禅や仏教の専門的な用語が出てくるとこれも一つ一つ理解しながら読むのはなかなか骨が折れます。その点,この本は,禅の通史として,唐代と宋代の中国禅を中心に,最後は鈴木大拙に至るところまでをざっくりと解説しています。大きな流れを掴むことが目的だとまえがきにもあるように,その目的は十二分に達成されています。禅の研究は専門的にはもっとずっと深いのだろうけれど,本書のこれはこれで,とても勉強になりました。

2017年10月1日日曜日

書楼弔堂・炎昼

京極夏彦 2016 集英社

どんな感想もありきたりになってしまってつまらないですが,とにかく,京極は面白い。今回のこれも突き抜けて面白い。至福。出版からずいぶん時間が経ってしまって,買ってずっと置いてあったのですが,ようやく読めました。前回の『破暁』とは,語り手が変わりました。次はどうなるのか。いやしかし,面白い。

是非ともさらに京極ファンが増えることを期待し,未だ京極を知らない方にはこの書楼弔堂シリーズから入っていただき,原点の京極堂シリーズ(百鬼夜行シリーズ)まで遡っていただくのも良いと思います。

2017年9月21日木曜日

哲学しててもいいですか?文系学部不要論へのささやかな反論

三谷尚澄 2017 ナカニシヤ出版

絶対に読んだ方が良い。そして、今すぐにでも読んでおいた方が良い。本というのは、内容にもよるけれど、時代や状況によって、読むべきタイミングというのがあると思いますが、この本は、教養(教育)ということを考える人にとっては、今すぐにでも読んだ方が良い、そういう本です。

一方で、この本は、30年後、50年後などにも取り上げられることを期待するし、その時どう読まれるかも、想像すると楽しみです。ああ、30年前はこんな状況だったのね、とほのぼのと読めるのか、あるいは、危惧していた最悪の状況になってしまっているか。日本という国が、知を、教養を、どこまで真剣に深く考えたかが、それを左右します。

願わくば、その道を間違えないように、大学教育に関わる人は、この本を絶対に読むべきです。読んで欲しい。読んで下さい。お願いします。

2017年9月9日土曜日

タオは笑っている

R.M.スマリヤン(著)桜内篤子(訳)1981 工作舎

読んで面白い本というのに巡り会うと,わくわくして人に言いたくなります。そういう本です。タオが好きな人は,読んで損はない本です。タイトルは,『タオは笑っている』ですが,原題は"The Tao is silent"です。どちらも良いタイトルです。

タオは言葉にしづらい(できない)けれど,タオってこんな感じ,というのがフワッと感じられる,そういう本です。1981年出版の本ですが,中身はまったく色褪せていません。なにせタオについての本ですから,当然,色褪せることはありません。

著者のスマリヤンは,今年の2月,つまり半年くらい前に亡くなりました。97歳。著名な論理数学者であり,哲学者であり,プロ級の手品師であり,そしてこの本の著者です。なんて素敵なんでしょうか。是非一読をオススメします。

2017年8月29日火曜日

ゾンビ学

岡本健 2017 人文書院

「ゾンビ」というコンテンツを様々な角度から考察した本です。いわゆる,映画紹介的な評論の本ではありません。ですから,作品によってはときどきネタバレのものもありますから,ゾンビものをまだあまり見ていない人はご注意(というか,こんなタイトルの本を読むのはゾンビものはよく見ている人だろうから,心配無用か・・・)。

著者は,「コンテンツツーリズム学」というのが専門であり,もう少し広い学問領域でいうと「観光社会学」ということらしい。本書には,うれしいことに,私の論文も引用してくれています。ありがとうございます。だから社会学の人ってのは,分野に偏らず,広くいろいろな文献を読むんだなぁと感心しました。

とにかく広く多様な角度から考察しているので,その点で,まとまりのようなものは少し欠ける気もしましたが,ゾンビ(映画やアニメやマンガなど)を研究するための「軸」を可能な限りたくさん提供しているという点は,非常に意義深いです。だから「ゾンビ学」というタイトルなんですね。

ゾンビ関連の研究本は,海外ではたくさんあって,その翻訳本が日本でいくつか読めますが,社会学的な視点でのものはなかったように思います。その意味では,日本では新しいのかなと思います。また,本書にはゾンビ以外のホラー・オカルトの対象に関する研究本も合間合間に紹介されていて,とにかく,世の中にはいろいろと読み切れないほど面白い本があることも,知ることができました。