2020年8月13日木曜日

心という難問:空間・身体・意味

野矢茂樹 2016 講談社

非常に読み応えがありました。「眺望論」と「相貌論」のいずれも説得力があります。素朴実在論をどうやって哲学的に説得するかに,約300ページ丸々かけています。どうやったら説得的か,熟慮に熟慮を重ねて,どういう順番で何をどう書くか,丁寧に練られている感じです。

だからとても分かりやすいし,説得的です。そして,これはこれで筋として間違っていないと思うし,生きている実感に一番近いところで着地している論になっていると思います。端的に面白かった。

他我問題については,これを機に,大森荘蔵を読もうと思う。

2020年7月23日木曜日

メタファーと身体性

鍋島弘治朗 2016 ひつじ書房

ここ1年ほど認知言語学,特に認知意味論やメタファーの本を読んできました。ただ,それ以前から身体心理学の授業をする際に,レイコフの概念メタファーについては知っていたし,簡単に授業でも話してきました。もう随分経ちます。さて,ここへ来て認知言語学・認知意味論を丁寧に読み始めて,自分が興味関心のある身体の話にすごくフィットするなぁと改めて思って,言語学的なアプローチが非常に面白いと感じていたわけですが,まさに興味関心のど真ん中の集大成のような本が,これでした。

最初からこの本を読んでいれば,とも思いましたが,しかし,この本に辿り着くためには丁寧に認知言語学や認知意味論の本を読んでいって理解を深めていく必要があったわけで,ここまでの経路(まさにメタファー)は必要なものだったと思います。そうでないと,この本に辿り着かないし(本書は一般書ではなく専門書です),読むための認知言語学的な基礎知識が必要だと思うからです。

しかし,鍋島先生の前著『日本語のメタファー』は,正直,読みにくかった。専門書だからでもあるけれど,今回の『メタファーと身体性』の方が,構成も分かりやすいし,そもそも,文章が読みやすいし例も面白い。だいたい同じ話(身体性メタファー理論)なのですが,この『メタファーと身体性』の方が断然読みやすいです。なので,鍋島理論を読むなら,この方がオススメです。

言語学,哲学,心理学,神経科学などを一人横断的学際的に論じているこの本は,本当にすごい。名著です。僕にとってはバイブルになりそう。素晴らしい本です。

2020年7月2日木曜日

【決定版】ゾンビ究極読本

ノーマン・イングランド(監) 2019 洋泉社

ゾンビマニアによる超マニアックなロメロ・ゾンビ本。ロメロのゾンビ6作品について,その鑑賞時のインパクト,制作の裏側,映画に出てくる関連グッズまで,マニア的な視線で映画を読み解く。全体的には面白いけれど,後半は段々飽きてくる。いや,ゾンビマニアからしたら全編面白いのかもしれないけれど,ここまでマニアックだと,もはやノーマン・イングランドの超個人的な日記を読んでいるような気分。ま,それがマニア本か。

2020年6月29日月曜日

日本語表現で学ぶ入門からの認知言語学

籾山洋介 2009 研究社

日本語を材料に認知言語学(認知意味論)の著書多数の籾山先生の本。日本語の話なので,いつも読みやすいし,分かりやすい。この本は特に,「類義表現」についてなので,タイトル的には「入門からの認知言語学」はちょっと広すぎるかな。これまで籾山先生の著書は結構読んだので,使われているネタの重複はしかたありませんが,しかし,籾山先生が根っからの野球ファンであることがこの本からもよく分かります。どの著書も,文例として野球ネタの引用が多い。

2020年6月25日木曜日

食えなんだら食うな

関大徹 2019 ごま書房新社

昭和53年(山手書房)に刊行されたものの復刻版です。名著です。絶対に読んでおいて損はない名著です。関大徹師の生き様,まっすぐで正直な生き様は,禅僧として命がけで生きることに対する本気のプライドを感じました。徹底的に,精一杯,生ききることの尊さと言うのでしょうか。中でも刺さったのは以下の言葉です。

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「徳」は積ましてもらわねばならぬ。そして,たといお礼の言葉といった些末なことでも,代償を求める心があるとするならば,その「徳」は帳消しになる,と心得られたい。
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無償で何かをするのは,正直,難しい。人間,何か見返りが欲しい。報われたいと思う。それが自然だと思います。でも,いつもいつも報われるような場面ばかりでないし,小さな事から大きな事まで報われないことはいっぱいあります。そういう,報われないときこそ「徳」を積んでいると思えば良い。だから,別に報われなくても良いんじゃないか。そういう,応援歌に聞こえました。