ベッセル・ヴァン・デア・コーク(著)柴田裕之(訳) 2016 紀伊國屋書店
読むのに約1ヶ月かかりました。大著です。しかし,最後まできっちり読まずにはいられない,そういう本です。これこそ名著であり,これこそ必読書です。
ヴァン・デア・コークはトラウマティックストレスの臨床と研究における第一人者であり,本書に書かれていることの説得力は図抜けています。それは自身の臨床経験と科学的研究に裏付けられています。何よりその情熱と向上心に感動します。
まずそもそも,臨床心理学を志し,臨床心理士になって相談やカウンセリングをしようと思う院生は,絶対に読んでおいた方が良い。というか,読まずに臨床やるのは,半端も半端,モグリだとたしなめても良いと思う。そのくらい,重要なことがぎっしり詰まっています。1ページさえも書いてあることに無駄のない700ページ弱の大著です。トラウマティックストレスの歴史そのものであり,そして最新のアプローチの数々であり,何が重要で何が重要でないか,その本質を丁寧に伝え,訴えている,そういう,熱い本です。かつ分厚い。
だから臨床の院生は修了するまでに絶対に読むべし。
そして基礎の院生も,読んでおいて損はありません。基礎系はやがて衰退し,臨床系一本になるであろう「心理学」という学問で食っていくためには,臨床的な観点と知識は,確実に役立つから,というかこれからは必須だから,若い基礎系の人は読んでおいて損はありません。