2013年1月31日木曜日

マインドフルネスを始めたいあなたへ

ジョン・カバットジン(著) 田中麻里(監訳) 松丸さとみ(訳) 2012 星和書店

初版は1994年で,翻訳した原著は2004年版。カバットジンの『マインドフルネスストレス低減法』(春木豊 訳,北大路書房)の初版が1990年なので(日本語版初版は1993年),本書は,理論的背景や方法論が詳細に書いてある『マインドフルネスストレス低減法』の続編として,より一般読者向けに書かれた本である。なので,マインドフルネス訓練プログラムの厳密な内容や回数や期間などについては全く書かれておらず,単純に,マインドフルネスの思想というか,向かっている方向性のようなものが,いろいろな状況や例えを用いながら,書かれている。マインドフルネスの入門書としては,こちらの方が良いだろう。これを読んで思うところあれば,それから『マインドフルネスストレス低減法』を読んでみると良いかもしれない。基本的に,マインドフルネス瞑想は坐禅(道元禅,曹洞禅)と同じことを言っていて,本書に書かれていることは,例えば,澤木興道老師,内田興正老師,ネルケ無方老師あたりと同じである。が,しかし,違うのは(これは,マインドフルネスと坐禅が違うのか,あるいは,カバットジンと澤木老師が違うのか,あるいは,西洋人と東洋人の感受性や表現方法が違うのか,わからないけれど),坐禅がとてもからっとしているのに対して,カバットジンのマインドフルネスの話はとてもロマンチックである。なんというか,優しい,のである。対して坐禅というのは,優しさも厳しさもない,暖かさも冷たさもない。何もない。それが禅である。だから,そこのところが,マインドフルネスと坐禅の違いなのか,はたまた,違わないのか。

2013年1月22日火曜日

Getting Inside Your Head: What Cognitive Science Can Tell Us about Popular Culture

Lisa Zunshine 2012 The Johns Hopkins University Press

カルチュラルスタディーズを「心の理論」(Theory of Mind)でアプローチした本。名付けてCognitive Cultural Studies。以前から「カルチュラルスタディーズ」って何?とは思っていたけど,ここで出てくるのは,まずは文芸評論。途中まで読んだけれど,分析がマニアックすぎて,ついて行けず,断念。Embodied Transparencyとか,面白い概念だなと思って読んでいたけど。後半の映画評論とかテレビ評論とかまで辿り着けず・・・。

2013年1月19日土曜日

頭の中は最強の実験室:学問の常識を揺るがした思考実験

榛葉豊 2012 化学同人

タイトルに惹かれて買いました。著者は,読みやすいように口語っぽく書いていますが,なんとなく読みにくい(分かりにくい)日本語のため,座り心地の悪い気分になり,読むのを止めました。口語なのに日本語が分かりにくい。これなら,口語っぽく語りかける感じではなく,堅くても良いから読みやすい日本語の方がずっと良い。専門用語を何の説明もなく唐突に用いているのですが,口語なら全体的にソフトになるから良いとでも勘違いしているのかな。イラストがとっても馴染みやすいライトなもので,そのイラストがかなりの数挿入されていて,本文よりもこのイラストの方が意味が分かる(イラストを見て初めて,著者が言いたいことが分かる)。このイラストレーターは,この日本語から文意を理解したという意味で,偉い。

2013年1月18日金曜日

Social Psychophysiology for Social and Personality Psychology

Blascovich, J., Vanman, E. J., Mendes, W. B., & Dickerson, S. 2011 Sage.

訳せば,『社会性格心理学のための社会精神生理学』でしょうか。内容は,心臓血管系指標(心拍や血圧),皮膚コンダクタンス(SCR,SCL),表情筋と瞬目活動,コルチゾールについて,それぞれの特性と測定方法,分析方法などで注意すべきことやコツなどが,丁寧に分かりやすく書かれています。専門家向けの高度な技術書というよりも(そういう本は,あまりに専門的過ぎてそこに書いてることについての知識がまず先にないと意味が分からなかったりしますね),これから生理指標を研究計画に組み入れたいという人向けの入門書です(それでいて,それなりに知っておくべき専門的な知見も多数含んでいます)。初心者が知りたいと思うちょっとしたことがきちんと丁寧に載っている点は,非常に良書であり,参考になります。

2013年1月10日木曜日

ただ座る:生きる自信が湧く一日15分座禅

ネルケ無方 2012 光文社新書

安泰寺住職のドイツ人禅僧,ネルケ無方氏の,分かりやすい坐禅指南書。副題には「一日15分坐禅」とあるけれども,中身はそれを強く推しているわけではなく,一般的な坐禅を勧めています(一日15分でも,やるといいよ,という意味ぐらい)。また,「生きる自信が湧く」という副題も,本来の坐禅から考えればこれもまたナンセンスで,「坐禅をしても何にもならない」のが坐禅なので(と,ネルケ無方氏も本書の中で繰り返しそう書いているので),こういう副題は,本屋が付けるんだろうなと改めて思います。曹洞禅(道元禅)の指南書であり,公案をやる臨済禅ではありません。只管打坐。澤木興道禅師や内山興正禅師の流れです。途中,マインドフルネスとの違い,瞑想との違い,みたいなところが出てきますが,個人的には,マインドフルネス瞑想と根本的原理的にはそんなに違わないと思っています。坐禅入門の本はいくつもありますが,これはその中でも良書の一つです。