2017年8月29日火曜日

ゾンビ学

岡本健 2017 人文書院

「ゾンビ」というコンテンツを様々な角度から考察した本です。いわゆる,映画紹介的な評論の本ではありません。ですから,作品によってはときどきネタバレのものもありますから,ゾンビものをまだあまり見ていない人はご注意(というか,こんなタイトルの本を読むのはゾンビものはよく見ている人だろうから,心配無用か・・・)。

著者は,「コンテンツツーリズム学」というのが専門であり,もう少し広い学問領域でいうと「観光社会学」ということらしい。本書には,うれしいことに,私の論文も引用してくれています。ありがとうございます。だから社会学の人ってのは,分野に偏らず,広くいろいろな文献を読むんだなぁと感心しました。

とにかく広く多様な角度から考察しているので,その点で,まとまりのようなものは少し欠ける気もしましたが,ゾンビ(映画やアニメやマンガなど)を研究するための「軸」を可能な限りたくさん提供しているという点は,非常に意義深いです。だから「ゾンビ学」というタイトルなんですね。

ゾンビ関連の研究本は,海外ではたくさんあって,その翻訳本が日本でいくつか読めますが,社会学的な視点でのものはなかったように思います。その意味では,日本では新しいのかなと思います。また,本書にはゾンビ以外のホラー・オカルトの対象に関する研究本も合間合間に紹介されていて,とにかく,世の中にはいろいろと読み切れないほど面白い本があることも,知ることができました。

2017年8月19日土曜日

「密息」で身体が変わる

中村明一 2006 新潮選書

2006年に出版されていたのに,本書に今まで辿り着けずにいました。自分の情報収集能力の稚拙さを思い知ります。空手の呼吸法はこの「密息」そのものです。知らずに拙著『空手と禅』では,この(空手の)呼吸法をとりあえず(胸式や腹式や逆腹式とは異なるという意味で,また丹田を充実させ続けるという意味で)「丹田呼吸法」として説明していました。

「密息」とは,骨盤を後傾し,吸いで腹が膨らみ,吐きでも腹を凹まさない,つまり,ずっと腹を出し続ける呼吸法です。私はこれを空手の師から習いました。

なお,身体術として骨盤を後傾させる技法は,日本だけでなく,中国の太極拳でもインドのヨーガでも,やります。太極拳もヨーガも,呼吸法が最重要の要素です。だからこの「密息」をもっと詳しく歴史的文化的に調べて辿っていけば,面白い研究になるんじゃないかと思いました。

2017年8月11日金曜日

比較思想論

中村元 1960 岩波全書

そもそも比較思想論って何だろうと思い,買いました。そのほんの少しだと思いますが,様子をうかがい知ることができました。定価「380円」と印字されています。文章も漢字も,今からするとあまり使わない用法だったりして,興味深かったです。