2020年9月20日日曜日

書評は「湯川ポテンシャル。」で

 2012年からこのブログで書評を書いてきましたが,2020年10月から,私のメインのブログである「湯川ポテンシャル。」の方で書くことにしました。ブログを一つに統一します。

湯川ポテンシャル。: https://yukawa-potential.blogspot.com/

書評を読んでくれていた方(はそんなにいないと思いますが:笑),今後は「湯川ポテンシャル。」の方をご覧くださいませ。


2020年9月17日木曜日

情動はこうしてつくられる:脳の隠れた働きと構成主義的情動理論

 リサ・フェルドマン=バレット(著)高橋洋(訳) 2019 紀伊國屋書店

もちろん,バレットの構成感情理論(本書では構成主義的情動理論)のことは知ってはいましたが,ほんのさわりを知っていただけで,そうかこういう話になるのか,ということを今更ながら本書を読んで良く分かりました。こうして一冊の本として,一般書として書かれると,説明もより具体的で分かりやすく,また,この理論の意味するところの広がり(あるいは深さ?)が非常に良く理解できました。歴史的名著であり,歴史的翻訳書だと思います。日本語訳も非常に読みやすいです。

内容的には,まさに「衝撃」「革命」「パラダイムシフト」「コペルニクス的転回」といった言葉が浮かんできます。いやはや,もっと早い段階からちゃんと向き合ってバレットの理論をよく理解しておくべきだった。いや,ある程度は理解していたつもりだったけど,この本を読んで,全く理解が浅かったことが分かりました。大平さんや余語さんがかなり前から説明してくれてたのになぁ(笑)。自分の力量不足を悔やみます。

でも,この本が出て,読んでみようという気になり,読んでみて,良かった。バレットが主張していることの意味がよく分かりました。感情研究者でなくても,世界を(人間を)理解したいと考えている人なら絶対に読んでおいた方が良い,歴史的名著の一つです。

2020年8月24日月曜日

映像と身体

 立教大学映像身体学科 2008 せりか書房

前からずっと不思議に思っていました。「映像身体学科」。立教大学の現代心理学部の中にあります。つまり,現代心理学の一つの学科です。なぜここに「映像身体学」なるものが入っているのか,まずこれが疑問でした。映像身体学は現代心理学なのだろうか。

もう一つの疑問は,なぜ映像と身体なのか。ただこれはたぶん「イメージ(表象)」という概念を結び目として,身体・イメージ(表象)・メディアという枠組みは,早稲田の文学部にもあります。東京大学にも,表象文化論教室があります。でもどれも,心理学の枠内ではありません。

そこで,そういう枠組みが一体どういうことに焦点を当てて,どういう問題を考えているのか知りたくてこの本を買って読んでみました。第一の疑問はおそらく解かれないとしても(映像身体学が心理学の一部とは到底思えないから),第二の疑問には答えてくれるだろうと思って。

しかしその期待は外れます。結局この本に書かれていることは身体学と映像学であり,残念ながら,決して「映像身体学」のことではありません。一体何なの「映像身体学」。かろうじて後半,映像と身体の話が絡むものもありますが,大半は身体学と映像学の話であり,つまりは寄せ集めです。これで良いのだろうか。ま,立教大学や当の先生達が良ければそれで良いのか。

なお,身体学と映像学それぞれの話はどれも面白いものでした。だから無理矢理「映像身体学」にしなくても良い様な気が,やっぱり,します。新しいモノを作るというよりは,お互いがお互いを制限してしまって,無理矢理感がどうしても拭えません。メディア表象学科とか,身体表象学科の方がまだ良かったのではないでしょうか。そんなネーミングは十分考えた上であえて「映像身体学科」にしたんでしょうけれど(笑)。

そもそも,「映像」をどう定義しているのかが,読んでいてずっとよく分からない。「映像」って?映画?フィルム?写真?絵画?イメージ?表象?心象?二次元?三次元?ってか,視覚で捉えるものなら何でもアリなのか。何でもアリで学問(学科)なのか。学の条件って,学科の条件って,何だ?何でもアリなのか。

でも,繰り返しますが,各章の論考はいずれも,読んでいて面白いです。気になるのは,なんでこれらを「映像身体学」なんてのにまとめようとするのか,です。その意図が全く伝わってこないし,伝えようとしていない(あえて回避しているような,あえて曖昧にしているような)ところが,どうしても腑に落ちませんでした。

2020年8月22日土曜日

人工感情:善か悪か

 福田正治 2018 ナカニシヤ出版

『感情を知る:情動学入門』の福田先生の本。来るAIの世界を想像する「未来学」の本なので,福田先生がさてどんなことを語るのかと読み始めましたが,なんとなく,書かれている情報や論理に新鮮味もなく,どこまで真実でどこまで噂レベルの話なのかもよく分からず,しばしばよく聞かれる危機感やリスクが散りばめられている割に話の筋にあまり深まりや独自性はなく,残念ですが,読んでいてワクワクしなかったので,読むのを止めました。

認知日本語学講座第4巻 認知意味論

 大月実・進藤三佳・有光奈美 2019 くろしお出版

認知意味論といっても,特にカテゴリー論(命名論,色彩語),意味変化・意味拡張,否定の話。専門書だからか,何かを説明するための用語や概念の説明がなく(それは既知だという判断か),とにかく全体的に分かりにくい。ただ,専門の研究者から見ればきっと,情報が詰まっている良い本なのかもしれません。

それから思うに,自分の興味がメタファーにあるので,内容的にちょっと的が違うせいもあるかもしれません。読みにくくて途中で断念しました。

禅の歴史

 伊吹敦 2001 法蔵館

禅に関わる人物や文献(経典)が無数に出ていて,何か言いたいことがあるというよりは,ただ名前と経典が並んでいるだけのように読めてきて,早々に断念しました。資料としては良い本だろうと思いますが,読み物としては厳しい。

2020年8月19日水曜日

認知意味論のしくみ

 籾山洋介 2001 研究社

認知意味論の特に,多義や意味の拡張に関するものでした。初版が2001年なので,話題が少し古いように思いました。学問の世界も,10年20年あれば,当時の理論やタームに代わって新しい理論やタームも出てくるので,そうなると,当時の理論やタームはあまり(あるいは全く)使われなくなることはあるわけです。また,あるタームに関する考え方や捉え方も洗練されてくるでしょうから,時代によって変わるのも当然です。

特にこの認知言語学は比較的新しい学問領域のせいなのか,あるいは,この学問(言語学?)がもともとそういう性質を帯びているのか分かりませんが,短い期間で新しい理論やタームがどんどん作られているように感じます。いやもしかしたら,心理学も端から見れば,似たような理論やタームが乱立しているでしょうから,同じようなものか。

2020年8月18日火曜日

絶対必見!SF映画200

 STUDIO28 2019 洋泉社

スペースオペラ,異星人,ホラー,タイムトラベル,ディストピア,ポストアポカリプス,ロボット,・・・などテーマで分けてそれぞれ5つぐらいの映画をレビューしています。どのレビューも面白いですが,ただ,選んだ基準がよく分からず,なんでこの映画?あの映画はないの?という感じ。

まぁ,たった200に絞り込むのは難しいというのもあるし,一般的に有名な映画を集めたところで本としての特徴は出せないから,どうしてもマニアックなものを選ぶ傾向は出てきてしまうでしょう。その点で,ライターの知識や趣味が出るのは仕方がないか。

この中で一人,書く文章が特徴的で(癖が強くて),生理的にどうにも受け付けないライターがいました。日本語が崩壊している感じで読みにくいし,映画通でないと分からない排他的な感じが鼻につきます。その人のレビューや総論は全部,飛ばしました。

2020年8月13日木曜日

心という難問:空間・身体・意味

野矢茂樹 2016 講談社

非常に読み応えがありました。「眺望論」と「相貌論」のいずれも説得力があります。素朴実在論をどうやって哲学的に説得するかに,約300ページ丸々かけています。どうやったら説得的か,熟慮に熟慮を重ねて,どういう順番で何をどう書くか,丁寧に練られている感じです。

だからとても分かりやすいし,説得的です。そして,これはこれで筋として間違っていないと思うし,生きている実感に一番近いところで着地している論になっていると思います。端的に面白かった。

他我問題については,これを機に,大森荘蔵を読もうと思う。

2020年7月23日木曜日

メタファーと身体性

鍋島弘治朗 2016 ひつじ書房

ここ1年ほど認知言語学,特に認知意味論やメタファーの本を読んできました。ただ,それ以前から身体心理学の授業をする際に,レイコフの概念メタファーについては知っていたし,簡単に授業でも話してきました。もう随分経ちます。さて,ここへ来て認知言語学・認知意味論を丁寧に読み始めて,自分が興味関心のある身体の話にすごくフィットするなぁと改めて思って,言語学的なアプローチが非常に面白いと感じていたわけですが,まさに興味関心のど真ん中の集大成のような本が,これでした。

最初からこの本を読んでいれば,とも思いましたが,しかし,この本に辿り着くためには丁寧に認知言語学や認知意味論の本を読んでいって理解を深めていく必要があったわけで,ここまでの経路(まさにメタファー)は必要なものだったと思います。そうでないと,この本に辿り着かないし(本書は一般書ではなく専門書です),読むための認知言語学的な基礎知識が必要だと思うからです。

しかし,鍋島先生の前著『日本語のメタファー』は,正直,読みにくかった。専門書だからでもあるけれど,今回の『メタファーと身体性』の方が,構成も分かりやすいし,そもそも,文章が読みやすいし例も面白い。だいたい同じ話(身体性メタファー理論)なのですが,この『メタファーと身体性』の方が断然読みやすいです。なので,鍋島理論を読むなら,この方がオススメです。

言語学,哲学,心理学,神経科学などを一人横断的学際的に論じているこの本は,本当にすごい。名著です。僕にとってはバイブルになりそう。素晴らしい本です。

2020年7月2日木曜日

【決定版】ゾンビ究極読本

ノーマン・イングランド(監) 2019 洋泉社

ゾンビマニアによる超マニアックなロメロ・ゾンビ本。ロメロのゾンビ6作品について,その鑑賞時のインパクト,制作の裏側,映画に出てくる関連グッズまで,マニア的な視線で映画を読み解く。全体的には面白いけれど,後半は段々飽きてくる。いや,ゾンビマニアからしたら全編面白いのかもしれないけれど,ここまでマニアックだと,もはやノーマン・イングランドの超個人的な日記を読んでいるような気分。ま,それがマニア本か。

2020年6月29日月曜日

日本語表現で学ぶ入門からの認知言語学

籾山洋介 2009 研究社

日本語を材料に認知言語学(認知意味論)の著書多数の籾山先生の本。日本語の話なので,いつも読みやすいし,分かりやすい。この本は特に,「類義表現」についてなので,タイトル的には「入門からの認知言語学」はちょっと広すぎるかな。これまで籾山先生の著書は結構読んだので,使われているネタの重複はしかたありませんが,しかし,籾山先生が根っからの野球ファンであることがこの本からもよく分かります。どの著書も,文例として野球ネタの引用が多い。

2020年6月25日木曜日

食えなんだら食うな

関大徹 2019 ごま書房新社

昭和53年(山手書房)に刊行されたものの復刻版です。名著です。絶対に読んでおいて損はない名著です。関大徹師の生き様,まっすぐで正直な生き様は,禅僧として命がけで生きることに対する本気のプライドを感じました。徹底的に,精一杯,生ききることの尊さと言うのでしょうか。中でも刺さったのは以下の言葉です。

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「徳」は積ましてもらわねばならぬ。そして,たといお礼の言葉といった些末なことでも,代償を求める心があるとするならば,その「徳」は帳消しになる,と心得られたい。
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無償で何かをするのは,正直,難しい。人間,何か見返りが欲しい。報われたいと思う。それが自然だと思います。でも,いつもいつも報われるような場面ばかりでないし,小さな事から大きな事まで報われないことはいっぱいあります。そういう,報われないときこそ「徳」を積んでいると思えば良い。だから,別に報われなくても良いんじゃないか。そういう,応援歌に聞こえました。

2020年6月19日金曜日

認知意味論研究

山梨正明 2012 研究社

認知意味論に関する専門書です。かなり専門的に突っ込んだ話ばかりです。若干,同じ話が出てくる(重複している)ところがありますが,それはおそらく,それぞれの章はそれぞれ別の論文ですでに述べていることを,一つの本にしたからではないかと思います。それはそれで良いのですが,だから専門書です。でも面白く読めました。勉強になりました。

2020年6月14日日曜日

ヨーガの哲学

立川武蔵 2013 講談社学術文庫

原本は1988年刊。とても勉強になりました。ヨーガを軸にインド哲学の伝統と仏教におけるタントリズム・禅・マンダラなども含めて分かりやすく紐解いている良書です。東洋哲学の歴史的な流れだけでなく,ヨーガで行われている実践,アーサナ,チャクラ,プラーナなどの解説も豊富であり,ヨーガを取り巻く思想・哲学の全体像を把握できました。ヨーガをする上でオススメというか,必読書,でしょう。

2020年6月6日土曜日

言語学の教室:哲学者と学ぶ認知言語学

西村義樹・野矢茂樹 2013 中公新書

対談形式なので,非常に分かりやすく読めました。野矢先生が尋ね,西村先生が説明し,野矢先生が突っ込み,西村先生が答える,という基本パタンです。この,「突っ込む」というところが,いわゆる教科書や専門書的な理論やモデルの説得的な説明とは違う良いところであり,素人的にはそこは分からないとか,ピンとこない,といった感じに野矢先生が遠慮せずに疑義を挟む,というのが,理解を深める形になっています。

というのも,言語の問題だから,こういう言い方もあるとかいった例外が結構多いし,ぱっと見た(聞いた)感じでは何が違うのか分からないものも結構あるからです。そこのところ,つまり,分かりにくいところや必ずしもそうとは言えないところを,教科書や専門書だったら簡単に済ましたり割愛したりするわけですが,本書はそこんところは丁寧に突っ込んでいます。

認知言語学的なアプローチを知る上では,分かりやすくて入りやすい新書です。オススメです。

2020年5月28日木曜日

今昔百鬼拾遺 天狗

京極夏彦 2019 新潮文庫

今度は「天狗」。舞台は高尾山。今回も最後までカラクリは分かりませんでしたが,しかし,伏線は見事に回収されます。さすがです。これでこのシリーズ3作は一段落でしょうか。とにかく,まぁ,京極ファンからすれば,これぞ京極,な作品です。お見事。

2020年5月27日水曜日

臨床心理学116:心身相関の心理臨床

心理臨床に関わるところで,いろいろな分野の話が載っていて,たいへん勉強になりました。

2020年5月25日月曜日

新訳 夢判断

フロイト(著)大平健(編訳) 2019 新潮社

読みやすい。非常に読みやすい。30年前,大学生のときにも読もうとしたけれど,残念ながら,当時読んだ訳書は,難しくて良く分からず,斜め読みしただけのような記憶があります。今になって,色々と知識が付いてから読んだからかもしれないですが,それを差し引いても,この大平訳は,とても滑らかな日本語訳になっていて,とにかく読みやすい。精神分析を知る上でも読んでおくべきだし,フロイトの考えていたことがこれでようやくそれなりにちゃんと分かった気がします。歴史的名著であることに変わりはなく,その上で,名訳です。フロイトの,とても人間くさい様子が見えて,面白かった。良いものを読みました。

2020年5月2日土曜日

人間科学の哲学:自由と創造性はどこへいくのか

山口裕之 2005 勁草書房

徳島大学・山口先生の本は『認知哲学:心と脳のエピステモロジー』を読んで,こりゃ面白い本だ(というか,たぶん,僕が興味関心のあることをそのまま丸ごとターゲットにしている本だ),と思ったのがきっかけで,著書の中でもそれに近い本書を読みました。

人らしさは食を分け合う感性にある。結論はそこに行き着くわけだけど,そこまでの物語がとても丁寧に語られています。自分が読んだ著書2冊から導けば,生の本質は個々に動機や感心(→感情)がある,人間の本質(自由や創造性)は共生しようという感性にある,というところにぐぐっと惹かれます。僕もそう思うから。

あと,他者問題(他者にも心があるのか,他者にも心があると思うのはなぜか,なぜ心があると言えるのか,なぜ心が分かると思うのか,その心はなぜ自分と同じだと言えるのか・・・であってる?)の話も,たぶんちょうど同じ興味関心。むろん,山口先生は哲学が専門なので,僕は一読者として「なるほど~,そうだよね~」と感心・納得するだけですが,読んでいて面白い。

そのうち,この他者問題で一冊,語ってくれないかなぁ。買います。徳島大学の学生がうらやましい。

2020年4月17日金曜日

思わず考えちゃう

ヨシタケシンスケ 2019 新潮社

人気絵本作家のヨシタケシンスケさんが,日常でスケッチしたイラストと,その解説。その絵本の独特なタッチとコメント(言葉)が面白い氏が普段考えていること,人間・ヨシタケシンスケが垣間見られます。思わず考えさせられる話,なるほどねと感心する話が詰まっています。

2020年4月14日火曜日

時間の言語学:メタファーから読みとく

瀬戸賢一 2017 ちくま新書

これは面白い!!「時間」について認知言語学的に徹底的に分析する,非常にエキサイティングな本です。瀬戸先生の本は初めて読んだので,この,独特の文章に最初戸惑いましたが(読んだら分かります),リズムに慣れると,ところどころに潜むギャグに一人笑いしてしまいます。

ある言葉,ある概念について,認知言語学的にアプローチするというのはこういうことです,という非常に優れた例だと思います。もちろん,学問的なアプローチとして認知言語学における形式・様式はあると思いますが,そういう堅苦しいことは置いておいて,この本のように迫っていけると分かりやすくて良いなぁと思いました。とても参考になりました。

瀬戸先生の本はまた読んでみよう。この先生の授業をライブ(生)で聞いてみたいと思う,そういう本です。

2020年4月4日土曜日

今昔百鬼拾遺 河童

京極夏彦 2019 角川文庫

京極堂・中禅寺秋彦の妹である敦子と,高校生の呉美由紀の二人が主人公のシリーズ第二弾。千葉の夷隅川で連続する謎の水死体。さて,当初,どんな話になるのかと思って読み進めていくうちに,さすが京極,見事に収斂しました。やっぱり面白いなぁ。

2020年3月31日火曜日

銀河帝国は必要か?:ロボットと人類の未来

稲葉振一郎 2019 ちくまプリマー新書

アイザック・アシモフの作品(ロボット・シリーズとファウンデーション・シリーズ)をベースに,宇宙開発,ロボット,人類(の幸福)について考える。著者の専門は社会哲学。本書の分野は,応用倫理学の一つとしての「宇宙倫理学」というらしい。著者のオリジナル?かと思って検索してみたら,意外,こういう分野がすでにあるようです。SF評論,アシモフ論として読んでも十分に面白い。

2020年3月23日月曜日

インド哲学10講

赤松明彦 2018 岩波新書

インドの思想的な展開について,勉強になりました。新書なので,文章は平易で分かりやすいです。ブラフマンを中心とする主に存在論について,様々な学派・教義の考えが,思想史的な流れで解説されています。

2020年3月16日月曜日

認知意味論:シリーズ認知言語学入門第3巻

松本曜(編) 2003 大修館書店

認知言語学の本をいろいろと読んで,どうやら自分はその中でも「認知意味論」に興味があるのだと分かり,その教科書的な本を読んでみた。全編通して,この認知意味論の世界が丁寧に解説されていて,とても勉強になった。結果,自分はその中でも「(概念)メタファー」や「イメージ・スキーマ」に興味があることがますます確信できた。メタファーやスキーマは,認知意味論の中でも,身体性との関わりがより強いテーマだからかと思う。「カテゴリー」の話も面白い。我々が世界をどう認識しているかは,カテゴリーをどう捉えているかから見えてくる。

今後は,認知意味論,メタファーの本を読み進めてみよう。

2020年2月27日木曜日

日本語研究のための認知言語学

籾山洋介 2014 研究者

籾山先生の『認知言語学入門』の続編的位置づけの本。なので,認知言語学の基礎的な(入門的な)本と言うよりも,籾山先生の専門である日本語を対象とした,さらに籾山先生の研究テーマを中心とした内容になっている。

しかし,だんだん,認知言語学の世界が見えてきた気がする。中でも認知意味論の世界が見えてきました。もう少し専門的なのも読んでみよう。ただやっぱり,「日本語」を材料とした本の方が分かりやすいから,籾山先生の本は取っつきやすい。

2020年2月13日木曜日

刺さる言葉:「恐山あれこれ日記」抄

南直哉 2015 筑摩選書

南師の本は,初めて読みました。ただ,どこかで写真とインタビュー記事は読んだ覚えがあります。こういう感じでこういう主張をする人だったのか,と感心。他の本も読んでみたいと思える内容でした。自己とか他者とか実存とか言語とか,面白い。ブログ記事の抜粋なので,論理的というよりは思いの丈を綴っている感じなので,ときどきよく分からないところもありますが,フランクに日常を書いているものなどは,笑えたり感心したり共感したりできました。

2020年1月26日日曜日

日本語は哲学する言語である

小浜逸郎 2018 徳間書店

昔結構よく読んだ小浜逸郎。なんだ最近は日本語にこだわってるのか,何々それは面白そうだと思い,買って読みました。中盤(2~4章。全体の7割ぐらい)は,著者独自の日本語文法論です。「哲学」というよりは(小浜氏は「言語哲学」と言っているが,これが言語哲学なのか?),日本語の特徴から日本文化あるいは日本人の認識の特徴を紐解いている感じ。だからといって,それを掘り下げることもなく,文法論を展開しています。日本人の認知構造のようなものが徹底的に語られるのかと思って期待していましたが,延々と続く文法論以外は,著者の思うままにあれこれ(あんまり一貫性なく)断片的に語られているだけです。記憶に残るのは,細かい文法論だけでした。

2020年1月19日日曜日

今昔百鬼拾遺 鬼

京極夏彦 2019 講談社タイガ

なるほど,そこから続いていたのか。京極ワールド全開です。昨年の夏,たまたま『ヒトごろし』を読んだ後,土方歳三の最後・函館に旅行し,鬼の副長最後の地を訪ねて感慨に耽ったところだったのですが,さすが京極,そこからそこに来たか。

この後の『河童』『天狗』も手元に購入済みなので,いずれそのうち。いやぁ,やっぱり京極は面白い。すごい。

2020年1月11日土曜日

生まれながらのサイボーグ:心・テクノロジー・知能の未来

アンディ・クラーク(著)呉羽真・久木田水生・西尾香苗(訳) 2015 春秋社

我々人類は,そもそもサイボーグなのだ,というテーゼを丁寧に書いている本。その通りだと思うから読んでいて違和感はないし,日本語訳もそれなりに読める文章ですが,しかし,議論の進度が丁寧すぎて遅い。だいたい先が読めたような気がしたので,つまらなくなり,途中で読むのを止めました。

ソウルダスト:<意識>という魅惑の幻想

ニコラス・ハンフリー(著)柴田裕之(訳) 2012 紀伊國屋書店

内容が難解なのか,原文がそもそも分かりにくいのか,それとも日本語訳が分かりにくいのか,原因は定かではありませんが,とにかく非常に読みにくい本です。何が言いたいのか良く分からない。いや,なんとなく言いたいことが分かりますが,読んでいて非常にストレスフル。なので,途中で読むのを止めました。

2020年1月8日水曜日

ヨガを深く学びたい!難しいヨガ哲学がスルスルわかる

Yoginiアーカイブ 2019 枻出版社

魅力的なタイトルに惹かれて即購入。なんといっても「スルスルわかる」である。構成は,Yoginiという隔月刊誌の特集を再編集したもので,内容的には重複しているところがたくさんありますが,しかし,イラスト豊富でとっつきやすいことは確か。

書いてあることはいろいろですが,基本的に,八支則の最初の,ヤマ・ニヤマについて,いろいろなヨガの先生が解説しています。

2020年1月4日土曜日

認知言語学研究の方法:内省・コーパス・実験

辻幸夫(監)中本敬子・李在鎬(編) 2011 ひつじ書房

認知言語学の代表的な研究方法をまとめた本。目的と内容がピンポイントで良い。認知言語学が何を明らかにしようとしているのか,そのための方法としてどのようなアプローチがなされているかを端的に知る良書です。

「内省」や「コーパス」を利用した方法は,やはり,言語学の人でないと,素人には難しいと思いました。でも,それが分かっただけでも収穫です。逆に,「実験」(ここでは心理実験・調査)は,当然ながら,慣れ親しんだ方法であり,特別に新しさはない。しかしそれは,慣れ親しんだ方法で<言語学>的な研究ができることを意味してもいます。勉強にはなりましたし,研究の指針を定める上で,役に立つと思います。

2020年1月1日水曜日

大阪芸大:破壊者は西からやってくる

向井康介 2019 東京書籍

数々のクリエイティブな映画人,俳優,写真家,アーティスト等々を生み出している大阪芸術大学。著名な人もいっぱい出ています(M-1優勝のミルクボーイの二人も)。そんな大阪芸術大学出身の脚本家・向井康介氏の回想録と著名人インタビュー記事でもって,大阪芸大の謎に迫ります。

いやしかし,一つの青春小説のようになっていて,読んでいて面白かった。誰しも振り返る記憶の中の学校生活ってのはあると思いますが,大学に通った身としては,学生生活ってこういう風だよな~と,なんだかしみじみと自分の当時も思い出しながら,読みました。

私は1990年に大学に入学していますが,なんていうか,当時はまだ大学っていう教育機関が良い意味で「いいかげん」だった気がします。あれから30年経って,大学はホント,教員も職員も学生も,とてもちゃんとしているところになりました。コンプライアンスとか叫ばれる時代ですから,それはそれで安心・安全・信頼・信用等々を保証するから当然と言えば当然ですが,なんだか自由度がなくて窮屈と言えば窮屈でもある。人間,「いいかげん」も必要なときがあります。

早稲田も当時,大阪芸大のように,大学に変な人がたくさんいて面白かったですが(文学部は演劇の人とか文芸の人とか活動家の人とかうろうろしてたから,老けた人とか汚い人とかいっぱいいた),最近戸山キャンパスに寄ったら,随分綺麗な建物とインターナショナルで身ぎれいな学生さんたちでいっぱいでした。余所の私立同様,とっても現代的で綺麗になってました。

と,大学に身を置く者として,当時と今の自分を思い,いろいろと考えさせられる本でした。面白かったです。