2012年9月29日土曜日

Martial arts and Philosophy: Beating and Nothingness

Priest, G., & Young, D.  2010  Open Court

武術(martial arts)を哲学的に解釈した章もあれば,武術を題材に哲学を説いた章もある,そんな本です。どちらかというと哲学の方にウェイトがある。その哲学的解釈やテーマが面白くないと,その章はまったく面白くない。例え武術の話が絡めてあっても。また,各章とも各執筆者がまったく異なるテーマで書いていて,文体も全く違う。哲学っていろいろです。なお,ここで書かれている武術は,試合(競技)をすることを含めているので,厳密に言えば武道(budo)の話ではないところもポイント。いわゆる武術スポーツ(combat sports)の話の中に,執筆者によっては武道的解釈がときどき混じったりする。

2012年9月26日水曜日

ホーダー 捨てられない・片づけられない病

ランディ・O・フロスト,ゲイル・スティケティー 春日井晶子訳 2012 ナショナル・ジオグラフィック

日本だといわゆる「ゴミ屋敷」の主のこと。HOLDERではなくHOARDER。hoardは,(財宝・食糧などを)蓄える,ため込むという意味です。ため込む行為はホーディング。本書の著者らを筆頭に,海外ではこのホーディングに特化した役所の部署や民間の組織(自助グループなど)があるようです。日本でもときどき「ゴミ屋敷」のことがテレビで取り上げられ,いつも興味深く見ていますが,主はきっと心を病んでいるんだろうなと思っていましたが,どう病んでいる(可能性がある)のかが,本書で垣間見ることができました。この問題について考える上で,非常に良い本です。

2012年9月18日火曜日

拳聖上野貴第八世宗家に捧ぐ-日本伝神道天心古流拳法

上野義明・日森定雄(監修) 滝口洋一・空岡康雄(編集・文責) 1999 元就出版社

天心流の体系の概要をまとめた本である。天心流の過去の(上野貴先生以前の)流統や史実については判断に迷うことは禁じ得ないが,上野貴という人物が極めて優れた希有な武術家・武術研究家であることは確かなことが分かった。当時の武術・武道を分け隔てなく研究し,自身の一流派としてまとめたその偉業は,称えられるべきである。現在もし,天心流が,糸東流空手だけをやっているとしたら,それは非常に悲しく,もったいない話なので,私は単なる部外者だが,是非,ここに記載されている様々な術を,後世に伝えていただきたい。

100の思考実験

ジュリアン・バジーニ(著) 向井和美(訳) 2012 紀伊國屋書店

哲学,倫理学,社会正義論,道徳哲学,心理学などで出てくる思考実験が,ランダムに100個,並んでいます。思考実験も,ベリーショートショートのような感じで読みやすく,また,その後に続く解説も,思考実験の中身をうまく読み解くヒントになっていて分かりやすい。思考実験は100通り書いてありますが,大別すると数種類ぐらいになると思います。が,どれも一つ一つ,ちょっとずつ問題としているテーマが違っていたりして,その意味でも,思考実験の醍醐味が味わえます。中には有名な話も掲載されているので,思考実験のネタ帳としても使えます。買って損はない,面白い本です。