2018年12月31日月曜日

武士マチムラ

今野敏 2017 集英社

『義珍の拳』『武士猿』『チャンミーグヮー』に続く,今野敏の沖縄空手シリーズ。面白かった。

しかし,この,自分が感じている面白さは,一般の読者も同じなのだろうか。言ってみれば,これはマニアックな武術小説(?)であって,今野敏の本職である警察小説ではない。今野敏ファンの人は,その一環として読むかと思うので,版元の採算は合うのだろうけれど,果たして,武術(特に空手,特に沖縄伝統の空手)を全くやっていない人がこれを読んで,どういう風に面白いのか,知りたいところではある。

僕の場合は,このシリーズ,涙するほど激しく感動的なのです。なぜなら,ここに出てくる人物のことごとくをすでに知っているからです。知っている名前がバシバシ出てきて,小説の中で生きた人間として苦悩し,成長し,活躍する。名だたる手の達人たちが,幼少のころ,青年のころ,壮年のころに,出会い,名を名乗り,語り合う。時には一戦交えたりもする。史実かどうか分からないけれど,そんなことを言ったかもしれない,そうだったのかもしれないと,読んでいてわくわくする。

次の作品を,心から期待しています。さて次は誰だ?今野氏が首里手の人なので,基本,首里手の達人でしょう。となれば,糸洲安恒,安里安恒,この辺りか。


2018年12月21日金曜日

テーラワーダと禅

アルボムッレ・スマナサーラ/藤田一照 2018 サンガ

対談なので読みやすい。テーラワーダ仏教と禅仏教(曹洞宗)の,仏教としての同じところと違うところが感じられる対話になっています。

2018年12月14日金曜日

「こつ」と「スランプ」の研究:身体知の認知科学

諏訪正樹 2016 講談社選書メチエ

倫理審査や統計分析を必要としない心理学,僕はこれを「一人心理学」ととりあえず呼んでいましたが(湯浅泰雄先生的には「主観主義的科学」),これを正式にやるとすれば,それはつまり現象学的な研究なのか,理論的な研究なのか,質的な分析なのか,はたまた人文学的な思想研究なのか,どういう風にアプローチすれば良いのか,その方法論について,ここ1~2年,いろいろさまよってきました。

が,本書を読んで,身体や感情を研究するアプローチとして,一つ,見えた気がしました。なるほど,一人称研究。からだメタ認知。これは面白い。お会いしたことはないですが,諏訪先生,ありがとうございました。道が拓けました。

この方法論を使えば,感情研究や身体教育研究に,そのまま使えます。「一人心理学」ができそうです。