2019年5月21日火曜日

ポリヴェーガル理論入門:心身に変革をおこす「安全」と「絆」

ステファン・W・ポージェス(著)花岡ちぐさ(訳) 2018 春秋社

ストレスへの反応としては,闘争逃走反応(fight-flight response)と相場が決まっていて,さらにここにfreeze(凍りつき?)反応があることは知識としてはありましたが,なるほどこういう風に複数の迷走神経系(ポリ・ヴェーガル)として段階的に働いているのかと,目から鱗が落ちました。

本書は,難解であるとされるポージェスのポリヴェーガル理論について,本人へのインタビューという形で,つまり,研究論文調ではなく,講演調の口語で理論を説明している点がポイントです。そのために,神経生理の話ですが,比較的分かりやすいです。インタビューなので,同じことを何度も繰り返し述べているところがやや難点ではありますが,それも,まずは理論の全容を知る上ではちょうど良いのではないかと思いました。次はもう少し専門的なものを探して読んでみよう。そう思える構成と内容です。

1994年に発表しているということで,もう随分前から理論は存在していたわけですが,迂闊にもノーマークでした。この理論は人間を理解する上で非常に重要です。心理学や精神医学領域における今世紀最大の知見と言ってもいいぐらいかも。だから必読だと思います。

まずは本書で,概要が読めて良かった。だから,この翻訳書は非常に良いです。研究者もそうですが,特に臨床家,トラウマ治療を専門としている人たちは,ヴァン・デア・コークの『身体はトラウマを記録する』とともに,必読書でしょう(そういえば,この本にもポリヴェーガル理論のことは書いてあったような記憶が)。

2019年5月10日金曜日

黄金の華の秘密

C.G.ユング・R.ヴィルヘルム(著)湯浅泰雄・定方昭夫(訳) 1980 人文書院

有名な,道家の瞑想本(『太乙金華宗旨』)のヴィルヘルムによる翻訳本。解説をユングが頼まれて書いている。ユングが,マンダラや元型など,自身の深層心理学の着想が正しいことを確信したと言われる道家思想の書。この解説を読めば分かるが,ユングはタオイズムにかなり精通しています。

そして何より,本書の内容がたまりません。道教の実践的側面である瞑想(内丹術)について,詳しく丁寧に書かれています。

そしてさらに,湯浅先生と定方先生による日本語訳,というところがまた味があります。湯浅先生の巻末の解説がまた勉強になります。そして定方先生の方はといえば,現在,仙人のような風貌になられています。去年あった人体科学会のセミナーでお会いしました。私の本のことをご存じでおられて,大変恐縮した次第です。

2019年5月1日水曜日

ジェダイの哲学:フォースの導きで運命を全うせよ

ジャン=クー・ヤーガ 2017 学研

面白い。エピソードⅣ~Ⅵを中心に,Ⅰ~Ⅲも加えて,登場人物たちの言葉から,ジェダイの哲学・思想を紐解く。フォースとともにあるジェダイたちの哲学は,今を生きる我々にもそのまま活かすことができる。

「フォース」は,そのまま「タオ」と言い換えても良い。あるいは「ダルマ」でも良いかもしれない。いずれにしても,その教えは現代的でもあり,古代的でもある。大昔から人はこの真理に気づいている。昔も今も変わらない。あとは実践するのみである。