2018年10月17日水曜日

退歩のススメ

藤田一照・光岡英稔 2017 晶文社

お二人の対談本です。対談本なので気軽に読めます。古の身体に戻れ,という話です。それを,禅と武術の観点から対話しています。藤田先生からのリクエストで光岡氏との対談企画が成立したとあとがきにあるように,全体的には,藤田先生が尋ね,光岡氏が答えるという構造になっている気がします。

うううむ,しかし難点は,対談なので,問いというか謎に関する深まりというか,ある種の答えのようなものがあいまいなまま,次の話題に移ってしまうところがあります。もちろん,直に話している二人にとっては「見えた」のかもしれないですが,読んでいる方は「見えにくい」。会話がかみ合っているようなかみ合っていないような感じもある。全体的に未消化感があるのは否めない。たぶん,実際の間合いやあいづちや言葉の細かいやりとりは,書籍にする段階で省かれているし表現のしようがないところもあるだろうから,仕方が無いことかもしれないけれど。

光岡氏の「しゃがむ」ワーク(「立ちしゃがみの型」)は使えそうなので,早速使おうと思います。

2018年10月14日日曜日

身心変容の科学:瞑想の科学

鎌田東二(編) 2017 サンガ

研究ができる人,する力のある人,推進力・エナジーのある人というのは,本当にすごいなと感心します。一応,同業者ではありますが,本当に凄いなぁと感心します。私はこんなにエナジーはない(笑)。共通するのは,その「疑問追求力」というか「謎を解明したい欲求」というか,そういうのが振り切れて強いんだろうと思いました。

特にすさまじいなぁと思ったのは,編者の鎌田東二先生と,町田宗鳳先生。もちろん,内田樹先生も永沢哲先生も。いずれも著名な人で,ただその著名な理由はそもそもそのすさまじさにあるわけですが。この本に出てくる先生の多くは,すさまじいエナジーを発しています。有り余るエナジー故に,いろんなところでいろんなことをしています。とても一人の人間がしてきたことには思えないぐらいの,広さと深さ。到底,真似できません。

さて,内容的には,基本的には「瞑想」に焦点を当てていますが,そこから身心変容や宗教といった話題にも広がっています。今後,第四巻まで続くようです。

2018年10月2日火曜日

サピエンス全史 上・下

ユヴァル・ノア・ハラリ(著)柴田裕之(訳) 2016 河出書房出版社

これは面白い!あのプロスペクト理論で有名なノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンは,2回読んだらしい。そのくらい,壮大なスケールとぶれない客観的視点で人類史を読み解いた名著だと思います。

教養として,この本は読んでおいた方が絶対に良い。必読書中の必読書だと思う。早速,この著者の次の作品,『ホモ・デウス』(上・下)も買ってしまいました。

付け加えておきたいのは,翻訳者である柴田氏の,滑らかな日本語訳です。この本が日本で売れているとしたら,内容はさることながら(なにせ世界30カ国で公刊されているらしいので),その理由の少なくない部分は,柴田氏の翻訳の上手さだと思います。非常に読みやすく,こなれた日本語に訳されています。だから訳し方の拙さで詰まることが全くありませんでした。普通に日本人が書いた文章を読んでいるような,そんな滑らかさでした。

海外の書籍の翻訳本は,当たり外れがあります。それは,日本語訳がこなれていないと,非常に読みにくくて疲れるからです。なので,この柴田氏の訳した本は,きっとどれも読みやすいと思います。