2014年4月30日水曜日

老子と太極拳

清水豊 2013 ビイング・ネット・プレス

『老子』(『道徳経』)の81篇(章)に沿って,そこで書かれている思想を紹介しつつ,それが太極拳とどう関係しているか,太極拳的にはどう解釈できるか,ということを丁寧に書いている意欲的な著作。太極拳の歴史や技術に関することもチラホラ出てきて,武術・武道好きにも読み応えがある。太極拳が「道(タオ)」へと至る最適なアプローチであることが,繰り返し述べられている。太極拳に関する立場は,いろいろあるので清水氏の説が唯一正しいものではないと思うけれども(特に,清水氏は,「陳氏は太極拳ではない」という立場と,「今現在最高の究極的な太極拳は鄭子太極拳だ」という立場を取っている。太極拳家からすれば,この辺りはいろいろと議論のあるところだろう),とにかく,この,太極拳という技法が「道(タオ)」に通じるというのは,その通りだと思う。勉強になりました。空手は稽古がそのまま禅そのものだということを僕は訴えているわけですが(拙著『空手と禅』を参照),身体を通したアプローチという意味で,やろうとしている中身,行こうとしている方向性など,仏教と道教の違いは微妙にあるものの,構造的にはほとんど同じです。

2014年4月19日土曜日

道教の世界

菊地章太 2012 講談社選書メチエ

道教の歴史と現状,それを踏まえた道教の特徴,仏教や儒教との関係と比較など,「道教」の全容を知る良書,ではないでしょうか。というか,道教に関してそれなりにいろいろと書いている本を初めて読んだので,的確なのかそうでないのか判断つきにくいところはあるけれども,読みやすいのは確か。ただ,この菊地章太という先生の文章の書き方が非常に特徴的ではあります。こういう文章を書く人は,これまで記憶にない。それぐらいに独特である。例えば,接続詞はほとんどなく,各文も短い。そういう短い文が並んでいる。まるで誌のような文章です。非常に珍しい。もしかしたら,普段もこういう感じで話しているのかもしれない。そういう,特徴的な書き方です。これには最初ちょっと慣れなかったけれど,半分過ぎた頃にはだんだん慣れてきて,この人の文章の独特のリズムに気持ちよさも感じるようになりました。まぁ,それくらい,日本語としても非常に分かりやすい文章でした。

2014年4月1日火曜日

タオの気功:健康法から仙人の修練まで

孫俊清 1995 築地書館

武当龍門派気功の入門書。まずは実践,という主旨の本で,4分の3は気功実践に関する解説です。図と説明で非常に分かりやすく解説されていますから,「こんな感じかな?」と実際にやってみることができます。呼吸と気(のイメージ)の合わせ方など,個人的には,空手にも応用できる点がいくつかありました。また,スワイショウや站椿,開合,無極(で立つ法)といった基本的な気功のエクササイズや,あるいは制定の近代的な八段錦などとも(当然ながら)共通する修練が多数含まれていて,そうしたエクササイズの意味や方法の理解を深められます。道教やタオの思想については,最終章にまとめられていますが,本書は実践中心なので,それらについて詳しく知りたければ他書に依った方が良いでしょう。