2019年3月30日土曜日

脚本を書くために知っておきたい心理学

ウィリアム・インディック(著)廣木明子(訳) 2015 フィルムアート社

この本は面白い。映画の脚本家のために,知っているとヒントになる心理学の話。ただ,「心理学」となっているけど,中身は「精神分析」です。原題もpsychoanalysisではなくpsychologyなので,意図的に「心理学」と書いているのは,まぁ,その方が通じやすいからでしょう。

なので,「精神分析」を映画を題材に学ぶ,という観点でも面白い本になっています。僕はむしろこの観点で面白かった。やや誤植が多い感はあるけれど,訳もこなれていて,読みやすかったです。

精神分析は,やっぱり面白い。なお,イントロダクションで,「精神分析は科学的な心理学者や医学者には人気がなく,非科学的な芸術家や俳優や作家には人気がある」と書いてました。その通り。

2019年3月21日木曜日

談 no.114 特集:感情身体論

乾敏郎・佐藤友亮・岡原正幸 2019 TASC・水曜社

それぞれの対談です。乾先生の本『感情とはそもそも何なのか』はすでに買ってあるので,そのうち読みます。佐藤先生の本『身体知性:医者がみつけた身体と感情の深いつながり』と岡原正幸先生の本『感情を生きる:パフォーマティブ社会学へ』はすでに読んでました。

というわけで,僕が興味関心を持つお三方のそれぞれの対談がつまった特集号だったので,即,買いました。いずれも,馴染む議論で,首肯できます。

しかし,ここに出ている,金巻芳俊さんの作品は,すごいなぁ。木彫り?

赤羽駅前ピンクチラシ:性風俗の地域史

萩原通弘・木村英昭(編著) 2018 渓流社

37年間分の風俗店のピンクチラシ・コレクション。別にエロを求めてではなく,あくまで純粋に収集として。すごいです。強烈に収集癖のある人なんだろうなぁ,たぶん。地図の描き方や書き込みや筆跡を見ても,緻密で細かい。

1978年から2015年の37年間です。1978年と言ったら,僕はまだ小学校1年生ですから,なんと果てしなく長い時間,集め続けたのか。もうホント,これだけで現代文化研究の貴重な歴史的資料です。

そういえば,祖父が死んだ時,彼の机の下から,いくつかの紙袋に入った大量のマッチ箱が出てきたのを覚えている。祖父はパイプ吸いで,たぶん,趣味は喫茶店巡り。そこでコーヒーを飲みながら何時間もかけてパイプを燻らす。社交性はあんまりない無口な人だったから,一人で名古屋の喫茶店巡りでもしてたんだろうけど,巡りながらマッチ箱集めてたんだろうなぁ。そういえば,緻密で細かい船の模型とかも作ってました。建築士でした。

2019年3月19日火曜日

心と身体がととのう「天台小止観」

高田昭和 2009 春秋社

岩波文庫の関口真大訳『天台小止観』は手強そうだと思い,まずとっかかりとしてざっくり「天台小止観」について知りたいと思って,とりあえず,読みやすそうな解説本的なところから入ろうと思い,読みました。その目的には適っている本です。ただ,高田氏の知識や学識が多分に含まれているので,「天台小止観」に基づいた仏教解説本,坐禅(仏教瞑想,止観)解説本,と考えた方が良いでしょう。

2019年3月16日土曜日

不道徳お母さん講座

堀越英美 2018 河出書房出版社

ほぼ同世代の筆者。子供も同じぐらい。思うところ感じるところはだいたい同じ。なんで小学校ってこんなことやるんだろう,という疑問をもとに,経緯を探っている,そんな本です。だから別に「お母さん」が「不道徳」になるための本ではないです。

中盤が母性幻想に関することで,あと,筆者が女性であることから「お母さん」とタイトルが付いているけれど,決して女性(お母さん)に向けた本というわけでもないです。

今に至る背景が分かって,いろいろ勉強になりました。

2019年3月15日金曜日

ヒトごろし

京極夏彦 2018 新潮社

新撰組副長・土方歳三の物語。1083ページ。京極夏彦の面目躍如,十八番である弁当箱小説。読み応えあります。幕末の志士は,得てしてヒーロー的に扱われますが,ここで描かれる志士たちはなんとも泥臭く,人間臭い。

持ち運びには向いていない辞書並みの厚さなので,自宅で少しずつ読み進めました。京極ファンはもとより,幕末の好きな人も読んでみると面白いかも。でも,沖田総司ファンは引くだろうなぁ(笑)。