2012年3月30日金曜日

禅の思想と剣術

佐藤錬太郎 2008 日本武道館

前4分の1は中国禅の歴史,後ろ4分の3は武道伝書の解説。中国禅の歴史的展開と,これを踏まえて,武道の伝書(奥義書)に出てくる禅思想を知る意味では意義深い。文章も平易で分かりやすい。著者は剣道の教士七段であり,ときおり自身の剣道修行における体験と意識に触れている。ただし,自身のそうした稽古・修行と体系的に絡めた武道論ではなく,あくまで例として間欠的に修行体験を添える程度。剣道家にはどれもピンと来るのかもしれないけれど・・・。武道伝書に関する,半ば事典的な学術書。

2012年3月23日金曜日

広辞苑の中の掘り出し日本語

永江朗 2011 バジリコ

何度も新聞広告に出ているのでさぞ人気で面白いのかと思ったけれど,あんまり面白くなかったぞ。そもそも,著者は日本語やその意味,および関連知識が(物書きにしては)少ない。物書きなんだよね,この人。しかも今,早稲田大学の教授ときた。もちろん,大半は聞いたことのない言葉を取り上げてのエッセイだけれど,「これぐらいは分かるでしょう」というのも2割ぐらいは含まれていたし,未知の単語についての著者の類推も背景知識が少ないためにとんちんかんだったりして,深みがない。「こころ」と「からだ」に関する言葉を取り上げました,とあるから,僕がそう思うのもしょうがないのか。本書の冒頭には,「面白くない本は最後まで読むべきではない」と薦めているので,何度も途中でやめようと思ったけど,それだと著者に迎合しているみたいなので,最後まで読み切りました。

2012年3月16日金曜日

芸道におけるフロー体験

迫俊道 2010 渓水社

武道芸道が目指す境地を,チクセントミハイのフロー概念で解釈したもの。著者の博士論文がベースになっている。書いてあることは,知識として参考になりました。1点だけ,本書を通して気になるところ。一般的に,仏教的あるいは禅的な悟りの境地を水で喩えることは多いんだけど,だから(水だから)それを「フローだ」というのは議論として乱暴だ。何ものにもとらわれない心とフロー体験は,厳密には違うと思う。

2012年3月9日金曜日

遺品整理屋は聞いた!遺品が語る真実

吉田太一 2008 青春新書

前著「遺品整理屋は見た!」は新鮮だった。本書はその第二弾。著者は何らかの教訓を毎稿の最後に引きだそうとするんだけれど,そういう教訓めいたものは要らないんじゃないかな。30分もあれば読めます。

2012年3月6日火曜日

身体論-東洋的心身論と現代-

湯浅泰雄 1990 講談社学術文庫

身体論の名著。1977年の著書がベース。身体論を語る上で必読。いやはや,この時すでに,ほぼ言い尽くしている。感服。なお,最後の方に出てくる,鍼と超心理学に関する議論だけは,今読むと,本書の質を下げるので,ここは飛ばして読むのを薦める。