2015年1月31日土曜日

ブルース・リー思想解析

羅振光 2014 オルタナパブリッシング

著者の羅振光(ロジャー・ロー)という人,どんな人なのか良く分からないのだけれど,本文中,日本の読者を意識して書いているような節のある箇所がときどき出てくる。この,オルタナパブリッシングという出版社もよく分からない。できて間もない出版社のようだから,書籍も少ない。どうもなかなかアングラなマニアックなカウンターなものを出しているところのようです。また,この本は翻訳のようなのだけれど,その原本の記載がない。だから書き下ろしなのだろうか。翻訳者もカンフー映画の専門のようですから,表紙に名前を出しても良いと思うんだけれど,出してない。ただ,中身はブルース・リー愛に満ちた,まぁまぁの本です。自分の意見や考えを前面に書くというよりは,タイトル通り,ブルース・リーの残した書籍や台詞から,彼はこう考えていたに違いない,という解釈本です。おお,そうだったのか!というような新しい発見は,特にはない。けれど,ブルース・リーの思想的な背景を知る上で,日本語で読める本の一つとしては,良いと思います。

2015年1月23日金曜日

別冊サンガジャパン①実践!仏教瞑想ガイドブック

蓑輪顕量(監) 2014 サンガ

仏教瞑想とありますが,「ヴィパッサナー瞑想」に関する特集です。仏教でいろいろなされているであろう様々な瞑想技法を紹介しているようなものではありません。ヴィパッサナーを徹底的に,あらゆる角度から,いろんな人の目線で,紹介しています。特に「ガイドブック」とあるように,実際にやってみる,というところにウェイトを置いて解説しています。ヴィパッサナーとは何かとか,ヴィパッサナーの(我が国における)普及の歴史とか,どこでどういう修行をしているのか(どういう道場があるのか)とか,認知行動療法やマインドフルネスやACTなども登場して,あれこれとざっくり全体像を知る上でとても勉強になりました。

2015年1月8日木曜日

太極推手入門

劉慶洲(著) NPO法人太極拳友好協会TFA(編訳) 2013 BABジャパン

太極推手の方法がとても分かりやすく説明してあり,良書です。太極拳・太極推手をする上で留意する点も豊富に説明してあり,読み応えがあります。巻末には太極拳に関する古典文献(拳論)が,重要な物はほぼ全て掲載してあり,これも資料的価値が非常に高い。願わくば日本語訳がもう少しこなれていれば,漢字をもう少し分かりやすい日本語に訳してもらっていれば,もっと分かりやすかったかもしれない。加えて,中国語として読ませたい漢字や日本語にない漢字についてはピンインを,一貫してつけてもらえると,もう少しスムースに読めたかもしれません(ちゃんとついている漢字もありました)。しかし,とにかく,内容の濃い良書です。買って損はありません。

2015年1月7日水曜日

「老子」新訳:名のない領域からの声

加島祥造 2013 地湧社

加島氏,大正12年生まれ,(発行時)御年90歳,と著者紹介にある。90歳になったことがないので分からないのだけれど,失礼ながら,最後に付してある解説(「老子私観」)など,90歳のご老体とは思えない,とてもクリアで分かりやすい文章です。言葉に年齢は関係ないだろうことは分かるけど,でも長い文章となると,果たして(そもそも自分がこの歳まで生きるかどうかもそうだが)こんな丁寧で分かりやすい文章が書けるものなのか,非常に疑わしい。大体,うちのばあちゃんが80歳ぐらいのとき,普段何言ってるのか,何書いてるのか,よく分からなかいことも多々あったぞ。

いずれにせよ,加島氏の訳は,良い。分かりやすいし,味がある。老子が語りかけてくる感じがする。タオイズムは,「優しさ」です。「調和」であり,「バランス」です。その通り。まさにそのままタイチーです。