2018年7月20日金曜日

からだの文化:修行と身体像

夏目房之介他 2012 五曜書房

2010年に学習院大学で開催された2日間のシンポジウムとワークショップをまとめた本です。マンガ,瞑想(仏教),中国武術,ピアノ,ダンスと多岐に渡る分野の中で,何かを習得する,鍛える,練る,上達させる,表現するというような過程での身体性を軸に,それぞれ展開されています。

個人的には,天台小止観の話(師茂樹)とダンスの話(山田せつ子)が,面白かったです。もともとは,野村英登さんという,武術や道教などの精力的に研究をされている方がいて,その人の話が読みたくて買いました。ですので,野村さんの話は無論,良かったです。丹田の話です。

慶應の藤沢で,やっぱり同じような身体教育のプロジェクトをやっていますが,こういうのに自分が興味があるからなのか,あるいは,こういうのが時代的要請としてあるのかわかりませんが,身体が世の中のテーマの一つになっているんでしょうかね。良いことです。

2018年7月8日日曜日

謎の映画

山崎圭司・別冊映画秘宝編集部(編) 2017 洋泉社

「謎の映画」というタイトルなので,理解しがたい映画,不可思議な映画,難解な映画,という意味だと思い,ジャンルは多岐に渡るだろうと想像しました。が,主にはホラー映画が取り上げられている感がありました。確かにホラーは不条理なことが多いから,謎だらけだろうけれど,素人的には,SFからヤクザ映画やカンフー映画まで,いろいろ謎の多い映画はあると思います。

昔,大槻ケンヂの『オーケンの,私はへんな映画を観た!!』(シリーズで2冊)というのがありましたが,ああいうのを期待していました。こっちは「キネマ旬報」で,『謎の映画』は「映画秘宝」。映画秘宝の方が,怪しい映画に強そうなので,いずれ「へんな映画」なんての,出して欲しいです(探せばすでに出てそうですが)。

2018年7月3日火曜日

感情とは何か:プラトンからアアーレントまで

清水真木 2014 ちくま新書

「感情とは何か」というタイトルだから,古代から現代までの哲学者によるその答えの系譜を解説した新書かと思いきや,そうではありません。科学的な感情理解(「感情」というブラックボックスに対し,入力と出力から規定していく知的パズル,と本書では評されている)ではなく,感情とは何かの問い方を説いたもので,決して何らかの答えが書かれているわけではありません。

本書を読み終わることようやく,この本のそういう主旨に気がつきました(笑)。いわゆる心理学的な感情理解のようなものを否定するんだけれど,じゃあ感情って何なの?という問いに対する答えは見えてこず,なんとなくずっと肩透かしにあったような感じが続くのですが,要するにここでは答えは求めておらず,でも科学的な感情理解では感情を理解したことにはならんよね,で,哲学者はどう問うてきたか,どう問うのが本質的に適切かを説いている,そういう本です。

なので,正直言えば,全体的には分かったような分からないような,そんなところです。ただ少なくとも,改めて,哲学って答えじゃなくて問いなんだ,ということが分かりました。そして個人的には,こういう感情の哲学のようなアプローチの方が丁寧で面白いことも,改めて感じました。