2015年3月25日水曜日

瞑想する脳科学

永沢哲 2011 講談社選書メチエ

テーマは「瞑想と脳科学」ですが,それを軸に,仏教哲学から未来学まで,飛び回ります。近年の瞑想に関する神経科学的なアプローチの流れを知る意味で良書ですし,それが人間の歴史の来し方行く末の中でどう位置付けられるかを俯瞰的に捉えた挑戦的な本でもあります。個人的には,なるほどと思える部分と,何だかよく分からない部分とが入り交じっていて,総合評価としては微妙。でも,瞑想について,あるいは東洋的な心身アプローチについて研究したり考察したりする上では,読んでおいて損はないことは間違いない。

2015年3月21日土曜日

大法輪 平成26(2014)年4月号

2014 大法輪閣

特集が「呼吸法を知るために」ということだったので,前からチェックしていましたが,ようやく手に入れて読みました。目新しいことは書いていないけれど,「呼吸」について,各種宗派の考えだとか,ここでは仏教とは関係ないところでの呼吸法に関する話だとか,読めます。

この,大法輪って雑誌,特定の宗派を超えた仏教関連の情報誌,ということだけど,こうやって毎月毎号,なにかしら話題を提供し続けているってのは,それはとても大変なことで,だからこそとても素晴らしいことだと思うし,こういうのを日本の若い僧侶の方とか積極的に読んで研究しているのだとしたら,それはとても良いことだと思う。そうだとすれば,日本人は,もっと仏教に頼って良いと思う。

仏教と言えば日本だと,葬式仏教なんて言われますが,なんというか,こういう雑誌を見ると,仏教も頑張ってるな~,と思いました。

ヨーガ入門:ココロとカラダをよみがえらせる

佐保田鶴冶 2001 ベースボールマガジン社

日本でヨーガと言えば,佐保田先生。前から名前だけは知っていた。この本は,私が茨城県県南生涯学習センターで身体心理学の実践講座を開いたときに,受講生だった女性の方に最後にいただいた。彼女はこの,佐保田先生のヨーガを昔から実践されていて,私がその講座で話していることと通じるから,是非この本を読むと良い,と言って一冊プレゼントしていただいたものです。ありがとうございました。

この本は,具体的なヨーガの実践方法について説明してある入門書です。ただその冒頭と最後に,ヨーガとは何か,というその本質が丁寧に説明されています。今時は巷にヨガ教室が溢れ,スポーツクラブにもヨガクラスがありますが,そのほとんどが単なるストレッチングやフィットネス程度にしか扱われていない。習っている人もそのつもりなら,教えているインストラクターもきっとそのつもり(その程度の認識)だろうなぁというのが多いような気がする。しかし,この本に書いてあるのが,本来の「ヨーガ」なのだ。「ヨガ」ではなくて「ヨーガ」ね。

もちろん,こういう本来のヨーガをやっている教室や道場もちゃんとあるだろうから,どうせやるなら,そういう,ちゃんと分かっている先生のところでやるのが,時間の無駄にならなくて良いだろうと,つくづく思います。

2015年3月19日木曜日

禅とタオ

加島祥造・板橋興宗 2012 佼成出版社

詩人・道家である加島氏と禅僧である板橋師との対談本。89歳と85歳の対談。対談本ですから,2時間ぐらいで読めます。タオと禅は,同じだね,という観点で,世の中や人のあれこれをお二人で語っておられます。下段に,丁寧に,出てくる言葉の注が示されているけれど,これはきっと編集の人が後からくっつけたもののようで,二人の思想的背景やポイントとずれているものもあるから注意。たぶん,長い対談を,編集者が分かりやすく短くまとめたので,会話がかみ合っているところとかみ合っていないところ,あるいは,前後で矛盾しているようにも見えるところも,いくつか散見されますが,まぁしかし,89歳と85歳,話す内容の今時具合とクリアさに,驚きます。

日本武道と東洋思想

寒川恒夫 2014 平凡社

本書の書名と,目次に並ぶタイトル(テーマ)はどれも魅力的で,一体,どういう話が展開されるんだろうとワクワクして読み始めたけれど,どうも読みにくい。著者の専門は人類学なので,人類学の文章ってのはこういうノリなんだろうか。どう読みにくいかというと,言いたいことがあっちへいったりこっちへいったりとブレまくる。いや,大局的に見据えよう,という意図なのかもしれないけれど,さっきはこっちの話をしていたのにいつの間にか脱線してそっちの話になって,それが先ほどのあっちの話とどうつながるのか良く分からないまま,終わる。もちろん,一つ一つの話は,回りくどい文章だけれど言いたいことは何となく分かる。けれど,これを続けて読むのがどうも,辛い。なので,3分の1ぐらい読んで断念しました。

2015年3月13日金曜日

こころが軽くなるエクササイズ

越川房子(監) 2007 東京書籍

認知行動療法の様々な技法について,分かりやすく説明してあります。特には自分一人でできるように,簡単にやり方を解説していて,分かりやすい。全面的には出していませんが,越川さんなので,マインドフルネスやそれと相性の良い身体的な技法が数多く紹介されています。本書でも執筆している,関西大学の菅村さんに拙訳書『タオ・ストレス低減法』をお送りしたら。そのお礼にと紹介していただき本書を購入。技法によっては専門家と一緒にやらないとなかなか本質的な効果は狙えないものもありますが,多くのエクササイズが,セルフヘルプ的に試せるものです。すぐに使えるものも多数あって,良い。ただ,やはり,「続けてやった方がいいよ(続けないと効果はないよ)」という部分は,どのエクササイズにも言えることで,本書の中でもそう書いてあります。これは,僕がやっている武術的な東洋的な身体的なエクササイズと同じで,やはり,何かを試したらアラ不思議あっという間に効果テキメン,なんてのはないわけです。本書にあるどのエクササイズも,じっくり根気よく,続けましょう。そうすると,何かが変わってくるはずです。

2015年3月12日木曜日

苦しまなくて,いいんだよ。

プラユキ・ナラテボー 2011 PHP

非常に良い本です。マインドフルネス瞑想をするなら,一度は読んだ方が良いです。僕の理解では,ここで言っているのは,主には止(サマタ瞑想)で,観(ヴィパッサナー瞑想)までは,説明していません。とりあえず,「気づき」が重要だから,まずは「気づき」だ,と読めました。気づきが観察を自然ともたらすと考えれば,まずはやっぱりawarenessが大切です。本書で紹介されている瞑想は,手動瞑想と歩行瞑想。手動瞑想というのは珍しくて,両手を順番にゆっくり動かしながら座る,というもの。こうなってくるとますます,太極拳や気功とやっていることは同じになってきます。必読です。

2015年3月6日金曜日

禅と武道

鎌田茂雄(編) 1997 ぺりかん社

こういうのを何というのだろう。アンソロジーだろうか。大正から昭和50年代ぐらいまでの,「禅」と「武道」に関する書籍(の一部)や評論を,編者が選集している。例えば,有名どころでは,大森曹玄,オイゲン・ヘルゲル,鈴木大拙,などが出てくる。それぞれ著書からの抜粋や,何かの雑誌に掲載されたコラムのようなものを,掲載発行年など特に関係なく並んでいて,また,この本全体に統一感はなく,また通底したテーマもない。だから読み進めることで何かが深まるわけではない。まぁしかし,一つ一つは面白いものもある。面白くなさそうな章は飛ばしました。

2015年3月3日火曜日

ソマティック心理学

久保隆司 2011 春秋社

ボディワーク(ソマティックス)に関連する心理学・心理療法に関する総覧的な本であり,周辺の概念や理論まで含めた全体を網羅的に眺めた本です。