2012年8月29日水曜日

Bruce Lee: Wisdom for the Way

Bruce Lee, Shannon Lee (Compile), Sarah Drida (Ed.) 2009 Black Belt Books

ブルース・リーが手紙やメモや映画の中で遺した言葉の断片を集めた本です。映画『燃えよドラゴン』の冒頭での"Don't think! Feel."が有名ですが,本書を読む限り,ブルース・リーの思想はまさにマインドフルネスです。32歳の若さで逝去した武術家は,もちろん映画スターとしての方が有名ですが,彼の遺したジークンドーという技術ともに,彼の思想は武術の本質を正鵠に捉えています。

2012年8月25日土曜日

気・修行・身体

湯浅泰雄 1986 平河出版社

「身体論」とほぼ同じ内容の論考です。ただ,本書の方が,ユング心理学と鍼灸(経絡)に関する記述が多い。著者は,心理学=深層心理学=ユング心理学,という立場で徹底して書いているので,現代的視点から見ると違和感はあります。これは鍼灸に対する著者の態度も同じ。「身体論」でも,鍼灸やオカルトに対する態度・立場が独特でしたが,非科学的な鍼灸やらユングやらを持ってこなくても,本書で展開される主張は可能です。現在では,湯浅の論を保証するような(鍼灸やユングに代わる)科学的な証拠が,いくつもありますから。

2012年8月13日月曜日

怒りの作法:抗議と対話をめぐる哲学

小川仁志 2012 大和書房

なにか無理矢理に,これまでの思想家・哲学者の考えを「怒り」にこじつけてる感じが,読んでいて妙にひっかかる。なので,途中で読むのを止めました。著者はもちろん,哲学研究者であり心理学者ではないのでしょうがないけれども,怒りという感情をテーマにするとどうしても個人の内的な心理面を述べざるを得ず,そうなるとどうしてもその面の考察が浅い。また,東洋的な(仏教的な)思想や身体論に関する理解・洞察も浅い(あえて短絡的攻撃的に対比しているのは,意図的かもしれないけれど)。てっきり,怒りという感情について哲学的に深めていく本かと思ったんだけれど,そうではなくて,これまでの思想家・哲学者の考えを「怒り」に絡めて列挙している哲学案内書でした。なので,一つのテーマを題材にした思想・哲学の入門書とすれば,成立していると思います。読みやすいので高校生用。ただ,著者の一方的な断定口調(書き方)が,気になると言えば気になります。なぜそこでその事実を断定できるのだ,エビデンスは?という箇所が散見。この人の本はもう買わないかなぁ,たぶん。

2012年8月7日火曜日

超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) 2012 文藝春秋

超常現象を題材とした,極めて優れた心理学の入門案内書になっている。読みやすいし面白い。超常現象の心理学的な解明を平易に解説した本でもあり,また,心理学の入門案内書としても充実している。訳者の日本語が読みやすくてとてもいい点も一役買っているかも。簡単にできる実験などがちりばめられていて,久しぶりに「面白い心理学の本」を読んだ気がする。自分には無理だし面倒だからやらないけれど,こういう,内容が濃くて面白い本を書く心理学者が日本にもいるといいなぁ。高校生か,あるいは心理の学部1~2生ぐらいに,おすすめです。