2012年5月30日水曜日

われ敗れたり-コンピュータ棋戦のすべてを語る-

米長邦雄 2012 中央公論社

今年1月に開催された第1回将棋電王戦。コンピュータ対米長永世棋聖(日本将棋連盟会長)。結果は,善戦及ばず敗戦。対戦が決定してから当日,および戦後の思いまでを綴った1冊です。米長氏は現役を退いて10年弱ほど経っているとは言え,「あの米長が負ける」ということは,コンピュータ恐るべし,です。昔,小学校の時に一時期将棋がはやって,休み時間に教室でよく指してましたが,戦略や構想は互いにめちゃくちゃのヘボ将棋。本書を読みながら,また将棋をちゃんとやってみようかなと思いました。

2012年5月29日火曜日

歪笑小説

東野圭吾 2012 集英社文庫

短編が12編で,登場人物もつながってる連続もの。ギャグあり涙ありで飽きない。さすがヒガシノだなぁ。『黒笑』『怪笑』『毒笑』も読んだけど,シリーズどれもハズレなし。安心して買えます。

2012年5月23日水曜日

MM9-invasion-

山本弘 2011 東京創元社

『MM9』の続編です。『MM9』がなかなか面白かったので(映画にもなってるみたいだし),さっそく読みました。話の展開はスピード感があって読み応えはあったけど,前編よりご都合主義な部分が多すぎて,そこのところがどうもいまいちでした。SFは設定の整合性の妙が一つのポイントだと思うので,あんまり過度にご都合主義だと,ちょっと萎えてしまう。世界に入り込めない。理屈をつければなんでもあり,ってわけでもない。難しい間合いです。さらに続編があるようなニュアンスですが,たぶん,もう買わないと思います。

2012年5月19日土曜日

警備員日記

手塚正己 2011 太田出版

読み終えるのが惜しい。映画にならないかなー。警備(主に工事現場の交通整理)の場面は是非,図入りで解説願いたい。ドキュメンタリー(ノンフィクション)としても,物語としても,読み応えあり。とにかく,ものすごく面白くできあがっている。なにしろ人物描写が秀逸だ。

2012年5月16日水曜日

怪談

柳広司 2011 光文社

あの『ジョーカー・ゲーム』の柳広司。『ジョーカー』も面白かったが,これも面白い。短編で6編,それぞれの物語の中に精妙なからくりがあって面白い。この世のモノでない何かによる仕業というオチではなく(だったらつまらんね),現実にそれなりに理屈があって事件が起きている,でもそれでいて何かがいるかのような雰囲気。どっちなのか分からない。「魔」あるいは「怪」とは,そういうものだ。

2012年5月11日金曜日

第2図書係補佐

又吉直樹 2011 幻冬舎よしもと文庫

もっと読みたくなる。それくらい,どのエッセイも面白い。又吉氏が読んだ本に,まつわっていたり,あるいは,内容から連想されたりする,極めて個人的な話が並ぶ。それがどれも面白い。それでいて,紹介されていた本を,自分も読んでみたくなる。

2012年5月8日火曜日

どちらとも言えません

奥田英朗 2011 文藝春秋

雑誌「ナンバー」掲載のエッセイ。面白い。奥田英朗にスポーツを語らせたら,実に面白い。「泳いで帰れ」や「野球の国」もリズミカルに進むスポーツ談義(漫談か?)が心に気持ちよかったが,本書もまた気持ちがよい。読んでいて楽しい。もっと読みたい。奥田英朗という人気作家は,人気作家であるにも関わらず(いや,そもそも人気作家だろうがなかろうが,本来関係ないのだろうけれど),バランス感覚のある人だなと,つくづく思う。計算してバランスを演じているのか,自然にこういう人物なのか,もちろん文字だけからは何とも判断できないけど,いたって正常な感覚の人だなと,そう思います。

2012年5月1日火曜日

武道における身体と心

前林清和 2007 日本武道館

悪くない。前林氏(神戸学院大学教授)は剣道家なので(佐川派大東流の師範でもある),本書の「武道における」というのは,内容的にはほとんど「剣道・剣術における」ということを意味している。日本武道の大半は,その技術や理論や思想について剣術をベースにしているから,これはこれで正しいけれど。しかし,現代剣道は果たして武道なのか。あれはスポーツだと僕は認識しているんだけど。前林氏のような「武道論」の専門家(本職?)でも,武道とスポーツを矛盾なく内的に併存させられている,そこのところがよく分からない。随所で現代剣道を武道的に理解しようとするところに無理がある。読んでいてそれがどうもしっくりこない。