2014年11月25日火曜日

老子 訳注帛書「老子道徳経」

小池一郎 2013 勉誠出版

あらためて『老子』を読もうと思って買いました。とりあえず現代語訳だけ読みました。現代語訳に訳注が付き,訓読の読み下し文があり,校定本文がありこれに校注が付き,と手元に置く資料としては完璧です。

2014年11月23日日曜日

太極拳に学ぶ身体操作の知恵

笠尾楊柳 2009 BABジャパン

素晴らしい。実に良いことがたくさん書かれている。Yang Chengfuの高弟・陳微明の『太極拳術』(1925年)の巻頭にある「太極拳十訣」を,丁寧に一つ一つ解説した本です。単に原文の意味を読み下しただけではなく,笠尾氏の武術家としてのこれまでの経験と知識に基づいて,分かりやすく解いています。その味は,長年稽古してきた武術家の試行錯誤の末に至る経験知・身体知がベースになっています。だから,笠尾氏の経験を,「太極拳十訣」を通して感じる,そういう本でもあります。笠尾氏の筆致も穏やか。太極拳をやる人は,是非読んだ方が良いし,それなりの人はもうすでに読んでいるはずの,そういう必読書の一つと言えるでしょう。

2014年11月14日金曜日

引っぱって,ゆるめて疲れない身体になる方法

藤本靖 2013 メディアファクトリー

ロルファーの藤本靖さんの本。簡単にできる目と耳と口と鼻をゆるめるワーク。ロルフィングに出てくる「筋膜」による理論的説明はよく知らないのでなんとも言えないけれど,いずれのワークにおけるインプットとアウトプット,つまりこうすればこうなる,というのは概ね体感できる。確かに耳を優しく引っぱったり,鼻の付け根を優しくつまんだり,その他いろいろなワークは,簡単にできてそれなりの変化はある。繰り返すが,これを「筋膜」というロルフィング特有の理論で説明するか,あるいはその他の理屈でも整合性をもって説得的に説明ができそうな気もするけど,とにかく,ワークとしてはどれも,難しくなくて,良い。基本,優しく柔らかく。あと,本書の最後に触れられている「薄膜」を張るという意識の持って行き方は,意外性があって,また確かにその通りに感じるので,おおなるほど確かにと思った。接点の緊張を緩和する。うん。これはなかなか使えます。今度学生に紹介しよう。

2014年11月12日水曜日

動ける身体を一瞬で手に入れる本

中嶋輝彦 2013 青春出版社

3つの動作に集約しているところはとても魅力的。ただ,この3つのどの動きも腰を前傾させて反らせるポーズで,どうも腰に良くないような気がしないでもない。実際,教示に従ってやってみたけれど,あまりよろしくない。こういうのは,やっぱり,ちゃんと実際にトレーナーに教わらないと,正しいフォームは身につかない気がする。本書は親切にネット上に動画を提供しているけれども,それとて,やはり,見よう見まねになってしまう。だから,この本の本当の効用は,正しいフォームを身につけないと何とも評価できない。あともう一つ本書の良くないところは,フォームの説明に「グィーッ」とか「スッ」とか「キュッ」とか「ポーン」とか,そういう擬態語(擬音語)が肝心なところで使われていて,一体どんな風にやるのか,平たく言えば,イマイチ分かりにくい。「スッ」って言われても・・・。

2014年11月11日火曜日

江戸しぐさの正体:教育をむしばむ偽りの伝統

原田実 2014 星海社新書

「江戸しぐさ」を信じている人は,是非,本書を読みましょう。「江戸しぐさ」ってのが,例の,「傘かしげ」「こぶし腰浮かせ」ってのは聞いたことがあったけど,なるほど,こういうカラクリだったのか。これ,かなり稚拙な大ボラ話なのね。で,これが今や「道徳」の副読本になってるって言うから,すごい話です。大丈夫か,学校教育。全国の小学校の先生,もし「江戸しぐさ」なるものが教科書や副読本に出ているようだったら,授業で「やっちまう」前に,とりあえず,本書を読みましょう。

2014年11月7日金曜日

たった7つのポーズで身につく「掤勁」養成法

スコット・メレディス(著)大谷桂子(訳) 2014 BABジャパン

うううむ。これは・・・。

何かを言おうとしているその熱意は伝わるけれども,何を言おうとしているのか,その具体性・科学性・客観性に欠ける言葉の選択が,意味を不明にさせている。これは日本語訳の悪さもあるけれど(訳者がこの手の話の専門でなければ,訳したらこんなすっちゃかめっちゃかな訳になるのかもしれない),いや,訳者の大谷さんという人の肩を持つとすれば,原文も結構癖のありそうな本なので(随所に,「達人=変人」と勘違いしたような表現が散りばめられているのが,なんとも鼻につく),このスコット・メレディスという人が悪いかもしれない。

いや,何やら伝えようとしているものは,何となくこれのことかなという実感は,ある。しかし,それを伝えようとするための言葉選びが良くない。かつ文章も悪い。要するに分かりにくい。悪文である。本人は悦に入っているようだが,そんな個人的陶酔につきあってられない。加えてその翻訳書ということで,おそらく,専門外の人が訳しているから,その分かりにくさが倍増している。

4分の1まで読んで断念。というか,時間がもったいないので中断。

山で正しく道に迷う<絵>本

昆正和 2014 日刊工業新聞社

僕は山には登りません。が,タイトルが面白そうだったので手に入れて読みました。副題に,「”まさか!”の原因は山ではなく,”心”が作り出す」とあるからです。ほほう。山登りにはどんな心理学的要因が関係して道に迷うんだ?と興味をそそられたわけです。著者はリスク管理の専門家だそうで,その専門的知見から,自らも登山家である経験を踏まえて,心のどこに隙ができるのかだとか,こういうときはどう対処したら良いのかなどが,いろんなシチュエーションで,あれこれ書かれています。読んで半分,山に登った気分になりました。

2014年11月3日月曜日

The Harvard Medical School Guide to Tai Chi: 12 Weeks to a healthy Body, Strong Heart & Sharp MInd

Peter M. Wayne & Mark L. Fuerst 2013 Shambhala

これは良い。素晴らしく良い本です。太極拳の本は世の中に無数にあるけれど,この本は太極拳についてサイエンティフィックに書かれた,希有な学術書です。基本的にはだから,読者は,太極拳を教えてる人,医療や教育に用いている人,そして研究している人を想定しています。太極拳の術理の理論的な要素,効果の背景とメカニズムと構造,そしてそれらを支える各種の科学的知見を丁寧に記述して解説した本。本書で出てくる太極拳は,Cheng Man-Ching(鄭曼青)の鄭子太極拳なので,楊式である。ただどの流派も原理は同じであり,本書にはその原理的な部分をプログラムにしているので,プログラム以外に習うなら何式でも良いとあります。しかし,繰り返しますが,非常に良い本です。良書中の良書。太極拳家には,必読書です。ただ,注を除いても270ページある分厚い本なので,読むのに一月掛かりました(笑)。

2014年11月1日土曜日

治す空手

山田治義 2014 中央公論事業出版

著者は糸東流であり,取り上げているのが「テンショウ」と「ナイファンチ」であり,何よりタイトルが良かったので買って読んだけれども,うううむ残念ながら,何ともはや,人にお勧めできるような中身ではありませんでした。(しかし,山田派糸東流修交会義心館は,世界の会員数が五万人,とあります。独自に世界大会もやっているらしい)

ところで,この「中央公論事業出版」というのは,検索してみたら,自費出版専門の出版社でした。関連会社は読売新聞と中央公論新社とあります。中央公論新社は読売新聞傘下ですから,要するに,この「中央公論事業出版」とうのは読売新聞系の自費出版専門会社,ということですね。雑誌・単行本・新書を出している「中央公論新社」とは同じ読売傘下でも,まったく別の会社です。