鍋島弘治朗 2016 ひつじ書房
ここ1年ほど認知言語学,特に認知意味論やメタファーの本を読んできました。ただ,それ以前から身体心理学の授業をする際に,レイコフの概念メタファーについては知っていたし,簡単に授業でも話してきました。もう随分経ちます。さて,ここへ来て認知言語学・認知意味論を丁寧に読み始めて,自分が興味関心のある身体の話にすごくフィットするなぁと改めて思って,言語学的なアプローチが非常に面白いと感じていたわけですが,まさに興味関心のど真ん中の集大成のような本が,これでした。
最初からこの本を読んでいれば,とも思いましたが,しかし,この本に辿り着くためには丁寧に認知言語学や認知意味論の本を読んでいって理解を深めていく必要があったわけで,ここまでの経路(まさにメタファー)は必要なものだったと思います。そうでないと,この本に辿り着かないし(本書は一般書ではなく専門書です),読むための認知言語学的な基礎知識が必要だと思うからです。
しかし,鍋島先生の前著『日本語のメタファー』は,正直,読みにくかった。専門書だからでもあるけれど,今回の『メタファーと身体性』の方が,構成も分かりやすいし,そもそも,文章が読みやすいし例も面白い。だいたい同じ話(身体性メタファー理論)なのですが,この『メタファーと身体性』の方が断然読みやすいです。なので,鍋島理論を読むなら,この方がオススメです。
言語学,哲学,心理学,神経科学などを一人横断的学際的に論じているこの本は,本当にすごい。名著です。僕にとってはバイブルになりそう。素晴らしい本です。