2015年9月29日火曜日

蛭子能収のゆるゆる人生相談

蛭子能収 2015 光文社

この前読んだ,『ひとりぼっちを笑うな』に続き,「蛭子さん」の本をまたしても読んでしまった。『ひとりぼっち』で書いていることと重なる部分もあって,両方読めば,この人の人生観をより深く堪能できます。

蛭子さんの言っていることは深い。真理というか原理というか,そういう本質的なところをストレートに(他者からの評価という枠組みから離れたところで)生きようとしている蛭子さんは,ある種,非常に仏教的です。

2015年9月25日金曜日

火花

又吉直樹 2015 文藝春秋

ようやく読みました。誰もが知る,今一番有名な,芥川賞作品。ピース又吉氏の本は以前,『第2図書館補佐』を読んで,この人すごい本読んでるんだなぁ,本が好きなんだなぁと,感心していました。他には『まさかジープで来るとは』も読みました。

さて,超有名な『火花』の感想です。そもそも「純文学」ってのを普段,どれほども読んでないのでどういう基準で評価するのが適切か分かりませんが,読後感としては,面白かった。もっとこうだったら良かったかなぁと思うところは端々ありますが,全体的には切なくて,良い。ただ,ラストは賛否が分かれるかも。天才と狂気は紙一重です。

又吉氏の次回作に期待しています。次はどんな物語なんだろう。

2015年9月23日水曜日

ヘイトスピーチ:「愛国者」たちの憎悪と暴力

安田浩一 2015 文藝春秋

安田氏の本は以前,『ネットと愛国』を読んだことがあります。あのときはまだそれほど知られていませんでしたが,だんだんと世の中に「ヘイトスピーチ」(の存在)が広まり,認知されるようになりました。

実際に街頭デモをこの目で見たことはありませんが,Youtubeにアップされているデモの様子はいくつか見ました。「ヘイトスピーチ」について知る上で,必読書です。

2015年9月16日水曜日

感じる力をとり戻しココロとカラダをシュッとさせる方法

藤本靖 2015 マガジンハウス

本書,藤本先生からご献本いただきました。ありがとうございます。

まず第一印象は,とにかく,分かりやすく伝えたい!という藤本先生の思いが全体から伝わってきます。その伝えたい思いの裏側には,人間の身体が持つ可能性の素晴らしさ,面白さが,あります。

藤本先生はロルファーなので,本書は全体的に「筋膜」で説明されていますが,背景の理屈が難しければそれは端折って,とにかく,「こうすると緩む」「ああするとリラックスする」という,インプットとアウトプットだけでも十分面白いし,役に立ちます。

中でも,「呼吸」の使い方,そして,緩めたいところ,ワークしているところへ息を持って行くときに,息がそっちへ自然に流れていく(「呼吸の波が届く」)と「おもう」と表現されているところが,良かった。「意識する」では強いし,「イメージする」では弱い。藤本先生の経験では,「おもう」と言うのが一番合っている,ということでした。なるほど。

加えて,特に最終章で強調されている,ココロとカラダの関係。カラダを使ってココロをほぐす,緩める,調える,シュッとさせる。そういうことだと思うのですが,これは本当に,僕が目指している,やろうとしていることと全く同じです。僕は心理屋なので,ココロから入ってカラダに至っているわけですが,藤本先生は逆に,カラダから入ってココロに至っている,ということでしょうか。

本書のテーマは,「身体を感じること」です。僕が普段使っている言葉でいえば,身体への気づき,でしょうか。感じるようになることで,自然とカラダは整ってくる,ひいてはココロも整ってくる。そういうワークがいろいろと詰まっています。

2015年9月14日月曜日

ひとりぼっちを笑うな

蛭子能収 2014 角川Oneテーマ21

「蛭子さん」の生き様をしたためた新書。たしか去年話題となり,ようやく手に入れて読みました。ベストセラーのようです。

この本にもよく登場しますが,『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』が好きで良く見ています。そこに登場する蛭子さんのノホホン振りが好きで,そんな蛭子さんが何を考えているのか興味があり,読みました。

なるほどその通りと思える,蛭子的生き方,実際にここまで徹底してできるかどうかは別として,大いに参考になります。僕もどっちかというと独りで自由にやる方が良いから,共感できます。

2015年9月10日木曜日

捏造の科学者

須田桃子 (2015) 文藝春秋

小保方氏のSTAP事件の全容を,毎日新聞の科学記者ならではの専門的な視点で緻密に解きほぐし,時系列で追っかけた,ノンフィクション。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

ちょうどホノルルに渡航する前に事件(論文発表)が起き,事件の経過はネットで眺めていました。笹井芳樹氏の訃報も向こうで知りました。

この事件の舞台となった世界トップクラスの研究者陣と自分とでは,住んでいる世界が天と地の差ほど違いますが,同じ科学者・研究者として,この事件が起こった研究業界の背景や,当の小保方氏の言動や振る舞い,彼女に関わる周辺の指導的立場にあった研究者の言動や振る舞いなどなど,反面教師として,とても勉強になる意義深いドキュメンタリーレポートでした。

研究者は,この本,読んで損はありません。というか,むしろ,読むべきです。STAP事件を,単なる事件として見過ごすのではなく,教訓として,活かしましょう。

加えてこの事件は,社会心理学的な事例としてもまた,勉強になります。人はなぜ信じるのか,人はいったん信じたものをなぜ捨てられないのか。それを考える一つの事例になると思います。


ちなみに笹井氏は,学年はずいぶん違いますが私の高校の先輩であり,同じ校舎に3年間通ったんだなと想像すると,リアリティを強く感じ,その分,強い悲しみを覚えます。なんとも残念でなりません。ご冥福をお祈りします。