2018年3月21日水曜日

気功家のための中医学入門

仲里誠毅 2016 ビイング・ネット・プレス

中医学に関する入門書です。最初の3分の1ぐらいは,中医学の概要であり,ここのところだけを読みました。残りの3分の2のうちのほとんどは,経穴の取穴方法や主治などの詳細な解説でしたので,読み飛ばしました。つまり,本書は,気功治療や鍼灸治療を実際にする方にとっての教科書的な本です。概要も,無駄なく淡々と書かれていますので,全体像を知るには良いと思います。

2018年3月16日金曜日

変調「日本の古典」講義:身体で読む伝統・教養・知性

内田樹・安田登 2017 祥伝社

「教養」ということを改めて考えさせられます。やっぱり,「誰とでも上手くやっていける協調的な人材を育てる」教育ってのは,もちろんとても大切ですが,たぶん,革新的で創造的なことをする人ってのは,そういう人ではないと思います。

他人に害を及ぼしたり迷惑をかけたりするのは問題があると思いますが,別に協調的でなくたって構わないわけで,教養ってのは,単に一律な汎用性の高い知識を幅広く身につけさせることではなくて,その人独自の世界を豊かにする入口や端緒を与えることなんじゃないかと思います。で,そういう人は,オリジナリティが高いから,協調的でない可能性の方が高い気がします。

何より,お二人の教養の深さ,幅広さに,驚嘆します。そこから生まれる真実味のある言葉に納得します。そしてきっとこのお二人は,誰とでも上手くやれそうな,協調性のある人とはとても思えない。そこがまた良い。

2018年3月4日日曜日

情動の哲学入門:価値・道徳・生きる意味

信原幸弘 2017 勁草書房

これは読んだ方が良い。感情(本書では「情動」)が,我々の認識や判断にどう関わっているか,つまり,我々の生にどう不可欠に絡まっているかを,丁寧にほぐしてくれます。各章の冒頭の導入で,生活上よくある出来事に触れてから始まるのも親しみやすく,微笑ましい。

恐怖,罪悪感,悲しみ,怒り,快不快など,出てきます。ただ,個別の感情を分析することが主眼ではなく,価値や道徳の判断という文脈の中で,感情がどう関わっているかを解く際に,いろいろな感情を例として取り上げています。

感情研究をしている人なら,これは面白いと思う。戸田山和久先生の『恐怖の哲学:ホラーで人間を読む』も面白かったけど,本書も面白い。感情の哲学は,面白い。