2019年6月18日火曜日

はじめての認知科学

内村直之・植田一博・今井むつみ・川合伸幸・嶋田総太郎・橋田浩一 2016 新潮社

認知科学の成り立ちとアプローチの仕方を知ることができる,分かりやすい入門書です。何を研究対象としているか,どういう立ち位置から考えているか,どういう問題が展開されうるかが,ざっくりと解説されています。一つ一つの研究の詳しい話は,他書や元論文に譲ることにしていて,ここでは,ニュアンスを感じ取ってもらうための本という感じに作られています。タイトル通り。

2019年6月14日金曜日

超芸術トマソン

赤瀬川原平 1987 ちくま文庫

「考現学」そして「路上観察学」なんて言葉を辿っていく内に行き着いたのが,「超芸術トマソン」。赤瀬川原平(2014年没)の名前はもちろん知っていて,記憶に近いところでは1998年の「老人力」(流行語大賞にもなった)ですね。

その赤瀬川氏による「路上観察学」。これは分かります。顔が中身を表しているから,そんなには驚かない。しかし,その後ろでチラチラとくっついている「超芸術トマソン」とは一体何なのか?「超芸術」?で「トマソン」?

読んで分かりました。そういうことね。いやしかし,これだけ時を経ると,なんで「トマソン」なのか,「ロビンソン」でも「ワトソン」でも「ダビットソン」でもなくて,「トマソン」なのか,なんでカタカナなのか,どういう意味なのか,皆目見当がつかなくて,そもそもこの突き抜けたネーミングのセンスは何なのか,それだけでただ衝撃を受けました。

そういえばそうだったと思い出したのは,赤瀬川氏は,愛知県立旭丘高校美術科(通称「旭美(きょくび)」)のご出身。そう,高校の先輩だったのでした(私は普通科ですが)。

2019年6月8日土曜日

リベラル・アーツとは何か:その歴史的系譜

大口邦雄 2014 さんこう社

リベラル・アーツについて,ギリシャ・ローマの時代から現代まで丁寧に辿る大著。前半は,西洋史,西洋宗教史(ユダヤ・キリスト教史)とも言えます。全体としては,大学教育史でもあります。勉強になりました。

2019年6月1日土曜日

「感情」から書く脚本術:心を奪って釘づけにする物語の書き方

カール・イグレシアス(著)島内哲朗(訳) 2016 フィルムアート社

プロットや構成やキャラクターも大事だけど,何より大事なのは「感情」である,ということで,どういう脚本を書けば,脚本の下読みの人に読み飛ばされないかを,事細かく解説した本。映画とは「感情」を提供するメディアであり(したがって,ハリウッドとは「感情」を売るビジネスであり),映画になることを望む脚本を書くなら当然,その「感情」に訴えていなければ,相手にしてくれないのだから,脚本の1ページ1ページに感情的インパクトを残すような書き方をしていないといけない,という指南書です。

映画に携わる脚本家の人は,ここまで考えているんだと感心しました。非常に勉強になりました。が,脚本術として微に入り細に入っているので,だんだんと途中でお腹いっぱいになり,読むのを止めました(笑)。でも,良い本だと思います(脚本家を目指す人にとってと,映画業界を覗いてみたい人にとっては)。