2015年4月29日水曜日

The Lost Interview

The Pierre Berton Show - 9 December 1971 Bruce Lee

1971年12月9日。ブルース・リーが出演したカナダのトーク番組。番組は,香港で収録されているようです。本書は,その音声を文字に起こしたもので,本というよりは冊子です。30分番組ですから,分量はそれほどでもない。

私が生まれた日が,1971年11月26日。我が心の師であるブルース・リーが,そのほんの数日後に香港で語っている記録。東洋と西洋のこと,アメリカのこと,中国(香港)のこと,俳優業のこと,テレビ・映画のこと,そして何より武術(哲学)のことを語るブルース・リー師父は,熱い。

ブルース・リーという人は,マグマのような熱い高密度なエナジーを内側に秘めていて,ついこぼれ出るエナジーのために人を惹きつけて離さない,そんな印象です。映画は,演技として制御されているけれど,こうしてフリーで話す様子を見ると,そのエナジーがじわりと伝わってきます。(なお,番組の映像そのものは,違法なのかどうか分かりませんが,今のところ,Youtubeで見ることができます。)

2015年4月23日木曜日

What is 'Tai Chi'?

Peter A. Gilligan (2010) Singing Dragon

イギリス人の太極拳家の書いた,良書です。特に,西洋人に向けて,理解されにくい中国的な(東洋的な)発想や考え方を,丁寧にほぐして解いています。なので,場合によってはやや説明が冗長なところもありますが,とにかく丁寧にほぐして説明している良書です。例えば,言葉の意味から順繰りに説いていくところは,西洋の人にとってとても大切な基本的説明となり,より深く正しく太極拳を知るための手がかりとなるでしょう。太極拳について研究してそれなりに理解している人にとっては,ここで書いてあることは特に目新しいことではありません。でも,西洋の人の書いた西洋の人のための太極拳書,という意味で,丁寧にほぐして概念を説明しているために,洋の東西を問わず,誰にとっても良書となっています。

なお,一点,Daoyinの説明にちょっと引っ掛かりました。「導引」なんですが,最初の説明のところでこれを「道陰」という意味で解釈しています。そういう解釈もあるのかもしれませんが,私は聞いたことがありません。もちろん,その後,「導引」ということも述べているので,最後まで間違っているわけではありませんが。我々は漢字を使うので「導引」を理解するのに,言葉からもある程度イメージを持てますが,向こうの人にとってはDaoyinというアルファベットを無意味に綴った単語でしかないわけです。ここから解きほぐしていく必要があるわけです。こういうところも,ある意味,文化という枠から眺める面白さがあります。