2013年12月21日土曜日

修業論

内田樹 2013 光文社新書

「するめ」のような本になればと願っていると,ご自身があとがきで書いておられる。噛めば噛むほど味が出る。たしかにそんな本になってます。一読しても分かるような分からないような箇所が数カ所あります。具体的にそれはどういう稽古でどういう状況のときどのような感覚になるのかを,事細かく言語化してくれればと思いましたが,そもそもそういう言語化が難しい可能性もあるし,あるいは内田氏が意図的にそこのところは言語化していないのかもしれないけれど,とにかく,そういう箇所もいくつかあって,そこは少し歯がゆいかな。しかし,それは,実際,たとえば合気をしてみないと分からない,つまり,身体的に内田氏のいう武道を体験しないと分からないかもしれない。合気はだから,空手とはまた違うアプローチを持った,ちょっと特別な武道かもしれないと,本書を読んで改めて思いました。

2013年12月11日水曜日

アップデートする仏教

藤田一照・山下良道 2013 幻冬舎新書

武道・武術専門誌『秘伝』に掲載される藤田先生との対談の収録時に,先生から直接いただいた一冊。ようやく読む時間が取れたので,読ませていただきました。仏教1.0から3.0へ向かう流れが,お二人のリアルな会話で展開される点が,非常にエキサイティングでした。結論を一言でまとめると,仏教3.0とは身体だ!ということでしょうか。身体。藤田先生の坐禅も『現代坐禅講義』にもある通り「身体」だし,山下先生の瞑想も「身体」です。ところで,『現代坐禅講義』を読んだときに書いたブログに,藤田先生とはご縁があればいつかきっと会えるでしょうと書きましたが,その通り,こうして会って対談することができました。縁に感謝。『秘伝』2月号(1月14日発売)に,対談掲載予定です。

2013年12月5日木曜日

日本人の知らない武士道

アレキサンダー・ベネット 2013 文春新書

武士道の要諦は「残心」であり,死を意識することで生を全うすること,生きる上でバランス感覚を持つことであるとし,こうした武士道の優れた精神は武道(著者の場合は特に「剣道」)を通して獲得することができる,ということを訴えている良書。武士道(精神)とは本質的にはどういうことかを,時代時代の変遷も踏まえて平易な語り口で書かれているので,分かりやすい。そして,現代日本における武道の衰退への嘆きも本書のポイント。特に「柔道」における武士道精神(武道精神)の消失は救いがたいことを,本書の中で再三にわたって指摘しています。武道とは武士道であり,その精神性と宗教性に着目した考察の一つとして,参考になりました。