2016年7月30日土曜日

ふだん使いのナラティヴ・セラピー

D. デンボロウ(著) 小森康永・奥野光(訳) 2016 北大路書房

とても良い。ナラティヴというアプローチというのはこういうことなのだ,ということが肌で感じられる良書です。

まず,日本語訳がとてもこなれていて読みやすい。翻訳書としては,これがやっぱりとても大切だ。原著者の英語の文章力も重要だけれど,それを日本語に訳す翻訳者の言語的なセンスは,翻訳書の良し悪しを大きく左右する。だから,翻訳というのは,単なる機械的な書き換えではなくて,技芸でありアートだと思います。(自分の翻訳は優れている,という意味ではなく,改めてそう心がけていこう,という意味で,です)

というわけで,日本語として「つっかえる」ところは,全編通じてほとんどなく(したがって読むにあたってストレスを感じないから),非常に読みやすい。だからこそ,ナラティヴ・セラピーというものを心から味わって読める一冊になっています。たくさんの事例(ナラティヴ)がふんだんに盛り込まれています。

世に,ナラティヴに関する本はいくつも出ていますが,専門的なものを読む前に,まずはこの本を読むと,本質や様子が(おそらく)ちゃんと分かって良いと思います。

2016年7月6日水曜日

この英語,どう違う?

ルーク・タニクリフ 2015 KADOKAWA

「○○vs.●●」という形で解説されていて,違いが分かって,それなりにためになる。結構知らない差もあって,それなりに面白い。文章の量も多くないので,すぐに読み切れます。

2016年7月4日月曜日

ブッダの脳:心と脳を変え人生を変える実践的瞑想の科学

リック・ハンソン,リチャード・メンディウス(著) 管靖彦(訳) 2011 草思社

それなりに情報的価値も高いけれど,若干,訳語が気になりました。例えば,おそらくimplicit memoryを,潜在記憶ではなく,「暗黙の記憶」と訳したり(explicit memoryは顕在記憶ではなく「明白な記憶」),など。原著の言い回しがもともと読みにくい文章なのか,翻訳の日本語が分かりにくいのか,どちらとも判別しにくいですが,いずれにせよ,訳語や文章が,若干,読みにくい。

また,「ブッダの脳」と銘打っているからには,仏教瞑想やマインドフルネスやコンパッションなどに絞っての議論だと想像していたのですが,原著者の専門からなのか,広く「瞑想」という範囲でいろいろ論じられている部分もあるような気もします(この話は,必ずしも仏教やマインドフルネスとは違うんじゃないかなぁ,というところがときどき,ある)。となれば,「ブッダの脳」というよりは,「瞑想の脳」とか「瞑想する脳」とかの方が内容にフィットするような気もします。まぁしかし,原題もBuddha's Brainだから,タイトルは正しいのだけれど。

引用文献リストもきちんと載っていて,その点はとても丁寧な本だと思います。また,脳に関する様々な研究知見も,勉強になります。ただ,途中で読むのを止めました。