2019年7月28日日曜日

「身軽」の哲学

山折哲雄 2019 新潮選書

山折氏,八十八歳。ご自身の人生を振り返り,今の心境を,西行・親鸞・芭蕉・良寛から見る。その「かろみ」に憧れ,自身もまたそこに至ることを望む。

西行・親鸞・芭蕉・良寛の,活き活きとした(生々しい)姿を,半分小説半分評論のような文章で綴っています。この本のテーマが「半僧半俗」「非僧非俗」「脱僧脱俗」であり,それが身軽さの所以なら,この本そのものからも身軽になった山折氏を感じます。

2019年7月22日月曜日

うつくしい博物画の記録

ウェルカム・コレクション(編)堀口容子(訳) 2019 グラフィック社

綺麗な装丁の本。図版は少ない。色見本など,博物学の初期?の資料がいくつか丁寧に載せてある。

2019年7月19日金曜日

身体感覚を取り戻すハンナ・ソマティクス

平澤昌子 2013 BABジャパン

フェルデンクライス・メソッドをベースに,トーマス・ハンナが創始した,ハンナ・ソマティックスの入門書。アプローチの背景的な理論は,センサリーモーターアムネジア(感覚運動健忘症)。無意識のうちに筋肉が収縮し,身体各部の嫌みや不調をもたらしている(ひいては心理的にも不調をきたす)という考えです。これに基づき,その,無意識的に(不随意に)収縮している筋肉を,意識的に(随意に)収縮させ,意識的に緩めることで,本当のリラックスを得よう,というエクササイズです。

普通のリラクセーションやマッサージやストレッチングの考え方だと,違和感や痛みのある部分を伸ばしたり,揉んだり,緩めたりとするわけですが,このハンナ・ソマティックスのやり方は,「パンディキュレーション」というものです。これがなかなか発想として逆転している感じがオリジナルです。具体的には,無意識に収縮して硬くなっている部分(筋肉)を,まずは意識的に一度収縮させて,その後,意識的にゆっくりじわじわと戻していく,というやり方。ただ緩めるのではなくて,ゆっくりじわじわ戻すところが特徴的(このためには筋肉のコントロールが必要)。つまり,無意識から意識に,筋肉を取り戻す,ということ。

私は左肩の凝りが慢性的に続いているので,早速,試してみました。すると,「おお!」という具合に,今まで揉んでほぐしてだと効かなかったのが,このパンディキュレーションでやると,スッと凝りが解消しました。うん,効くね,これ。個人的には,今後も使っていきたいと思います。

ただ,こういう身体的なアプローチは,いろいろあるのですが,いろいろあるのはなぜかというと,効く人と効かない人がいるからです。人の身体は千差万別ですから,あるメソッドは効くけどあるメソッドは効かない,というのはよくあります。万人に効くメソッドはない,ということです。だから胡散臭いと思われる節もありますが(笑),まぁ,そういうものです。

広い意味では,西洋医学的な薬なんかも同じで,効果のある人とない人といるわけですが,こうした身体的なメソッドやセラピーや東洋的な身体技法などは,さらに幅が広いと思います。ですから,やってみて効けば儲けもの,というぐらいが適当かと思います。誰にでも効く,というわけではありません。その人に合えば,合う方法が見つかればラッキー,ということです。

2019年7月14日日曜日

映画分析入門

マイケル・ライアン,メリッサ・レノス(著)田端暁生(訳) 2014 フィルム・アート社

映画学の教科書。映画というアート,メディアを読み解くにあたって,その撮影の技術やスタイルから意味を読み解いて行く前半部分と,歴史やイデオロギー,政治や科学など,様々な視点からの批評の方法について紹介している。前半は,色々な映画を題材に表現技法を解説してるところは面白い。後半は,批評の視点を一つないし二つの映画を挙げて照会しているけれど,批評の仕方を解説するというよりは,批評の例を読んでいる感じなので,面白いところと面白くないところあり。ただ,前半だけでも,買って読む価値はあります。

2019年7月6日土曜日

路上観察学入門

赤瀬川原平・藤森照信・南伸坊(編) 1993 ちくま文庫

本書は,1986年刊行の本が文庫化されたものです。今和次郎・吉田謙吉に端を発する考現学の流れを汲む路上観察学。『超芸術トマソン』や,マンホール,女子校制服,解体建築物のカケラなど,どうでもいいもの,何の役にも立たないもの,つまり資本主義経済からはみ出してるか,そのマージナルにあるものを,観察し,記録する。ただそれだけ。いやはや,面白い。

これは博物学に近いという本書諸氏の考えのもの,早速,博物図の本を数冊注文しました。楽しみです。

2019年7月1日月曜日

「知としての身体」を考える:上智式教育イノベーション・モデル

鈴木守他 2014 学研

どの章も非常に魅力的でした。講義を本にした形なので,まるで講義を聴いているようで,とても読みやすい。内容も,身体に関して多岐に渡るので飽きない。この講義科目は,きっと面白いだろうなぁ。今でもやってるのかな。

「身体」と「身体知」がテーマの授業で,いろんな分野の先生が語る。体育・スポーツの先生だけじゃないから面白い。宗教学や社会学,言語学の先生が身体を語る。

上智は革新的だと思う。「ウェルネスと身体」という実践と講義から構成された授業科目があるそうです。体育って,ただ競技やフィットネスをやって汗流して体動かす,とかだけじゃなくて,こういう,身体を知る,って授業はやっぱり体育の一つの本義だと思います。それが体育の,人間学としての重要な核だと思います。