2015年9月10日木曜日

捏造の科学者

須田桃子 (2015) 文藝春秋

小保方氏のSTAP事件の全容を,毎日新聞の科学記者ならではの専門的な視点で緻密に解きほぐし,時系列で追っかけた,ノンフィクション。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

ちょうどホノルルに渡航する前に事件(論文発表)が起き,事件の経過はネットで眺めていました。笹井芳樹氏の訃報も向こうで知りました。

この事件の舞台となった世界トップクラスの研究者陣と自分とでは,住んでいる世界が天と地の差ほど違いますが,同じ科学者・研究者として,この事件が起こった研究業界の背景や,当の小保方氏の言動や振る舞い,彼女に関わる周辺の指導的立場にあった研究者の言動や振る舞いなどなど,反面教師として,とても勉強になる意義深いドキュメンタリーレポートでした。

研究者は,この本,読んで損はありません。というか,むしろ,読むべきです。STAP事件を,単なる事件として見過ごすのではなく,教訓として,活かしましょう。

加えてこの事件は,社会心理学的な事例としてもまた,勉強になります。人はなぜ信じるのか,人はいったん信じたものをなぜ捨てられないのか。それを考える一つの事例になると思います。


ちなみに笹井氏は,学年はずいぶん違いますが私の高校の先輩であり,同じ校舎に3年間通ったんだなと想像すると,リアリティを強く感じ,その分,強い悲しみを覚えます。なんとも残念でなりません。ご冥福をお祈りします。

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