2019年2月18日月曜日

ホモ・デウス(上)(下)

ユヴァル・ノア・ハラリ(著)柴田裕之(訳) 2018 河出書房新社

前作『サピエンス全史』が人類の誕生から現代までの話で,今作は人類のの今とこれから未来の話。人類の未来に関する本ですが,予言本ではなくて,つまり現代批評です。

前作もそうですが,この著者のロジックはとても説得力があり,読み進めていて引っかかるところがない。書いていることは刺激的ですが,なるほどと思える論理展開であり,書き方として非常に自制的であり,バランスが取れている(偏向していない)からだと思う。ただ自分の主張だけを押しつけてくるのではなく,そうではない立場の考え方もあることを述べながら丁寧に進めていく点に,読む側としては,彼の主張に引き込まれているミソがあると思いました。

エビデンスも領域問わず広範に渡っていること,皮肉やシャレも随所に効いていること,そしてもう一つは,前作もそうでしたが,翻訳者の訳文が非常に読みやすいこと,この辺りが,読んでいて気持ちが良いのだと思います。訳文が,日本語のリズムとしてこなれていて,上手いと思う。

内容的には,本作の場合,前作よりも,より心理学的というか,哲学的というか,心,感情,精神といったことが重要な(本書全体を通してのテーマ的な)感じになっています。だからより面白いと感じるのかも。

前作と併せて読むのが良いと思います。読んでおいて絶対に損のない,いや,いろんな意見のある中で,「今」,読んでおくべき本ですね。

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