2012年10月13日土曜日

実戦武術物語

姉川勝義 1995 壮神社

本書はある意味,不条理実験小説である。著者の回顧録かと思いきや,いつの間にか(段落や節が変わることなく)一人称の「私」が別の人物になっていたり,どこからどこまでが他書の引用なのか分からなかったり,突如として現代語が古語・近代語に変わったり(たぶん,何かをそのまま引用しているのだと思うが,切れ目がないために,どこからどこが引用か分からない),さらには突然,「以下略」として終わったり。内容も,「だから何?」という話も多く,最後の章などは術技について図入りの解説が並んでいるだけで,これがどういう技術体系のどういう部分の何を表すのかも,はっきりしない。そして予想通り(笑),突然終わって,完。読んでいて目眩のする本書は,だから,不条理実験小説として読めば面白い。しかし,著者である姉川氏が,戦後の混乱する昭和期に,武道・武術を巡って,有象無象の人たちに会い,走り抜いた熱い魂は,ひしひしと伝わってくる。こういう人生は,良い。

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