2012年11月2日金曜日

<香り>はなぜ脳に効くのか:アロマセラピーと先端医療

塩田清二 2012 NHK出版新書

(メディカル)アロマセラピーに関する最新の状況について書かれた本です。統合医療として,アロマセラピーをいかに医療・健康増進・病気予防に利用するかということについて,科学的に検討されつつある,ということを分かりやすく書いた良書ではあります。しかし,1点,なぜアロマセラピーでなければならないのか,つまり,植物由来の精油が効くという知見があるならば,その成分と適切な含有量を備えた薬を開発すればいいのではないかと思った次第です。薬というのは元来,そういうものなんじゃないのかな。そこでなぜアロマセラピーなのか,と言う点です。それはたぶん,やはり<香り>やトリートメント(マッサージ)によるリラクセーション効果だとか,施術者との会話だとか,そういった,植物精油の薬理学的な効果以外の部分がけっこう大きいと思うのです。代替補完医療が正統医療に組み込まれない理由は,こうした,薬理学的な効果以外の効果を同定・査定できない,また,それはその手法の唱える本来の効果ではないからでしょう。例えばプラシーボ効果。代替補完医療の怪しさは,その手法が唱えている理論や理屈以外の,単なるプラシーボ効果で成り立っているというのが,一般的な理解です。だから,アロマセラピーも,プラシーボを越える効果を科学的に示すことができなければならない。本書に載っている科学的なデータも,統制群の設定がいまいちなものが多い。つまり,これはアロマセラピーだと称して,精油でない合成香料を加えた水かなにかで施術したときの効果を比較検討しなくてはいけない。ただ,やみくもにアロマセラピーを喧伝するのではなく,本書の著者のように科学的にアプローチしようという姿勢は素晴らしいと思います。

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