2012年11月9日金曜日

大山倍達の遺言

小島一志・塚本佳子 2012 新潮社

極真空手創始者・大山倍達先生が死去した後の,極真会館分裂に関するノンフィクション。『大山倍達正伝』の続編です。読み物として,よくできています。もしかしたら空手や武道・格闘技に興味がないと面白くないのかもしれないですが,個人的には,飽きさせない構成で,一気に読みました。大山倍達という人の魅力があまりにも強すぎて,そういうカリスマがいなくなった後の組織というのを,いかにまとまって維持するのが難しいかを証明する好例です。社会心理学,組織心理学の格好なテキストとも言える。

しかし,本書では,福島の三瓶啓二師範(新極真会)が,徹底的に「悪者」的位置づけで書かれていますが(ものすごい悪人で,分裂騒動の元凶は三瓶氏である,と暗に言っているぐらい),いや実際そうなのかもしれないけれど,名誉毀損などで訴えられないのか,要らぬ心配をしてしまいます。半ば人格否定に近い書きっぷりです。そりゃ,新極真会から取材拒否されるだろうな。本書は関係者への取材に基づいて極力主観を交えずに書いたと宣言していますが,しかし,著者(小島・塚本)の主観が混じらない客観的な書き物などありえないので(構成や言葉の選び方など),これはあくまで小島・塚本両氏の立場から見たドキュメンタリーと判断するのが良いでしょう。しかし,読み応えのある,極めて面白い一冊でした。

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