2012年10月13日土曜日

実戦武術物語

姉川勝義 1995 壮神社

本書はある意味,不条理実験小説である。著者の回顧録かと思いきや,いつの間にか(段落や節が変わることなく)一人称の「私」が別の人物になっていたり,どこからどこまでが他書の引用なのか分からなかったり,突如として現代語が古語・近代語に変わったり(たぶん,何かをそのまま引用しているのだと思うが,切れ目がないために,どこからどこが引用か分からない),さらには突然,「以下略」として終わったり。内容も,「だから何?」という話も多く,最後の章などは術技について図入りの解説が並んでいるだけで,これがどういう技術体系のどういう部分の何を表すのかも,はっきりしない。そして予想通り(笑),突然終わって,完。読んでいて目眩のする本書は,だから,不条理実験小説として読めば面白い。しかし,著者である姉川氏が,戦後の混乱する昭和期に,武道・武術を巡って,有象無象の人たちに会い,走り抜いた熱い魂は,ひしひしと伝わってくる。こういう人生は,良い。

2012年10月12日金曜日

Striking Thoughts: Bruce Lee's Wisdom for Daily Living

Bruce Lee, John Little (Ed.) 2000 Tuttle

ブルース・リーのインタビュー,メモ,手紙などの断片集です。30年前(ちょうど没後10回忌のリバイバル)に衝撃を受けてから,私の今ある人生のあり方の多くを方向付けたブルース・リーは,このときすでにマインドフルネスでした(マインドフルネスという言葉は使っていないけど)。本書を読んでまた,勝手に因縁を感じています。ブルース・リーがいかに東洋と西洋の哲学に精通していたか,またそれを実践していたかが,分かります。

2012年9月29日土曜日

Martial arts and Philosophy: Beating and Nothingness

Priest, G., & Young, D.  2010  Open Court

武術(martial arts)を哲学的に解釈した章もあれば,武術を題材に哲学を説いた章もある,そんな本です。どちらかというと哲学の方にウェイトがある。その哲学的解釈やテーマが面白くないと,その章はまったく面白くない。例え武術の話が絡めてあっても。また,各章とも各執筆者がまったく異なるテーマで書いていて,文体も全く違う。哲学っていろいろです。なお,ここで書かれている武術は,試合(競技)をすることを含めているので,厳密に言えば武道(budo)の話ではないところもポイント。いわゆる武術スポーツ(combat sports)の話の中に,執筆者によっては武道的解釈がときどき混じったりする。

2012年9月26日水曜日

ホーダー 捨てられない・片づけられない病

ランディ・O・フロスト,ゲイル・スティケティー 春日井晶子訳 2012 ナショナル・ジオグラフィック

日本だといわゆる「ゴミ屋敷」の主のこと。HOLDERではなくHOARDER。hoardは,(財宝・食糧などを)蓄える,ため込むという意味です。ため込む行為はホーディング。本書の著者らを筆頭に,海外ではこのホーディングに特化した役所の部署や民間の組織(自助グループなど)があるようです。日本でもときどき「ゴミ屋敷」のことがテレビで取り上げられ,いつも興味深く見ていますが,主はきっと心を病んでいるんだろうなと思っていましたが,どう病んでいる(可能性がある)のかが,本書で垣間見ることができました。この問題について考える上で,非常に良い本です。

2012年9月18日火曜日

拳聖上野貴第八世宗家に捧ぐ-日本伝神道天心古流拳法

上野義明・日森定雄(監修) 滝口洋一・空岡康雄(編集・文責) 1999 元就出版社

天心流の体系の概要をまとめた本である。天心流の過去の(上野貴先生以前の)流統や史実については判断に迷うことは禁じ得ないが,上野貴という人物が極めて優れた希有な武術家・武術研究家であることは確かなことが分かった。当時の武術・武道を分け隔てなく研究し,自身の一流派としてまとめたその偉業は,称えられるべきである。現在もし,天心流が,糸東流空手だけをやっているとしたら,それは非常に悲しく,もったいない話なので,私は単なる部外者だが,是非,ここに記載されている様々な術を,後世に伝えていただきたい。