2015年7月15日水曜日

サボタージュ・マニュアル

米国戦略諜報局(OSS) 越智啓太(監訳・解説) 国重浩一(訳) 2015 北大路書房

サボタージュ(Sabotage)とは,①労働争議中に労働者が機械・製品などに故意の損傷を加えること。②妨害・破壊行為,という意味です(研究社新英和中辞典)。

ネットで一時話題になったらしい本マニュアル(私は知りませんでした),何が面白いかといえば,敵国(占領国)にダメージを与えるために市民ができることを,ごくごく丁寧に事細かく説明していること,その大分は物理的な機械やラインなどの破壊行為だけれども,最後の特に人的な要因による組織の破壊行為は,笑える。

そこに書いてる破壊活動・妨害活動は,今まさに現代の組織体の中でも頻繁に行われているものであり,つまりは,いかに自組織内部に「レジスタンス」が多いかがよく分かります。

と,このように(私のように)たぶん,多くの人がこの本を読んで首肯するのだろうけれど,しかし,多くの人が首肯するということはその人たちはこのサボタージュ・マニュアルに書いてあるような行為をしていないと主観的には認識しているといえる。しかし,よく考えてみたら,そんな大多数の人が主観的にはこういう破壊活動・妨害活動をしていないのなら,世の中もっとうまく回っているはずなんだけれど,実際はそうではない。むしろ,そういう多くの人たちが,自分以外の人たちがいかにここに書いてある破壊活動や妨害活動をしているか,嘆いているだろう。

つまりは,人というのは,自分のことは棚に上げて,まるで問題が無いかのように認識するものなのだ。問題を引き起こしているのはあくまで自分以外の人たちである,少なくとも自分は平均以上のまともな人間であると,強く信じている。そうやって多数の人が思い込んでいる。

この本は,「ああ,まるでうちの会社だ」「こういう人いるよね~」という,自分のいる環境を嘆いたり,他者をおもしろおかしく批判・批評したりする材料に用いられることが多いかもしれない。しかしそうではなくむしろ,知らず知らずのうちに,つまり非意識的(非意図的,自動的)に,自分自身もこの破壊活動・妨害活動に荷担していないかを考える材料にしてみてはどうだろうか。

あなたも知らないうちに,レジスタンスになっているかもしれません。

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