2015年12月1日火曜日

マインドフルネス瞑想入門

吉田昌生 2015 WAVE出版

数々あるマインドフルネス本の中でも,この本はかなり良い。これまで何冊も読んできましたが,この本は,マインドフルネスで押さえておきたいエッセンスを,丁寧に無駄なく,それでいて簡潔に,説明しています。マインドフルネスに関する本は今,巷に数多く溢れていますが,この本は絶対に読むリストに入れておいた方が良いと思う。

この吉田氏は,ヨギーですが,ヨーガ的な説明や解釈に偏らず,いわゆるカバットジン的な(心理学的な)マインドフルネス瞑想をする際の要点やコツを中心に,ほんのわずかにではありますが軽くプラーナとか気とか仏教的背景にもサラッと触れながら(深追いせず),解説しています。入門書だからといって端折ることなく,マインドフルネス瞑想とは何をどうすることなのかについて,押させるべきところは押さえている感じです。

だからとても良い。瞑想を続けていても,ついつい自分よがりになっていきます。なのでときどき初心というか本質を振り返る意味で,たまに読み直してみるとよいだろう,そう思える本でした。

これは買って損はないです。

ただし3点,細かいですが気になる点がありました。だけど,たったの3点。

・「怒り」についてはちょっと別,ということを書いています。確かに書いているようなこともあるかもしれませんが,しかし,僕は怒りも同じように扱えると思っています。マインドフルネスというアプローチを考えると,特にこの場合はこれ,あの場合はこれと,例外を示さないことの方が良く,というか,例外はなく同じように扱えるわけで,その意味で,「怒りは別」みたいな書き方はちょっと誤解を招くかと思いました。

・「脳」に関するところは,間違っていないようで,ただ,後半,あいまいな感じになります。そもそもここでは,脳の可塑性を前提として,マインドフルネスが影響する,ということだけ分かれば良いので,脳に関する詳しい話や厳密な議論は,直接的には必要なかったかもしれません。

・最後に「思考」に関して,認知を変容する,という話になっていますが,しかしこれは,典型的なCBTの話であって,せっかくここまで全編マインドフルネスについてほぼ隙の無い丁寧は本になっているのに,なぜここで少し歴史を戻るのか,と思いました。いやもちろん,マインドフルネスも感情や思考をターゲットにしてはいるのでCBTの流れの中に組み込まれるわけですが,しかし,扱い方が根本的に違うわけで,感情や思考をどう変容しようかという話ではなくてどう付き合おうかという提案なわけだから,ここで認知の変容,のような話はマインドフルネスの本質と拮抗するように読めます。


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