2017年10月29日日曜日

このせちがらい世の中で誰よりも自由に生きる

湯浅邦弘 2015 宝島社

まず表紙が良い。とても良い。そして中身ともよくフィットしています。とある40歳過ぎのサラリーマン(「男」)と,奇妙な老人(「老人」)との対話形式なので,まずもって,読みやすい。

この「男」(サラリーマン)が,とてもリアリティのある悩みや問題を「老人」にぶつけ,「老人」が老子や荘子で答えるというパタンなのですが,良さのポイントは,「男」が反論するところです。現実的な制約やしがらみや状況を踏まえて,老子や荘子のようには行かないでしょう,そこは無理でしょう,と都度都度反論するところに,老荘思想をよりよく理解する工夫がなされています。

というのも,老荘思想は,それだけを単独で一方通行で読むと,理想論かあるいは説教集のようになってしまうからです。それでも良いと言えば良い。そういう理想論に自分をどう近づけていくかも,自己を考える上で必要だからです。本書はその点,この「男」にその役目を担わせています。だから,読みやすい。

老荘のニュアンスを掴みたければ,専門書に近いものよりも,こういう読み物の方が良い。我々のような専門家ではない素人にとっては最適です。でもこれ,かの有名な湯浅先生が書いているところもまた,ミソでしょう。おすすめです。

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