2013年3月1日金曜日

現代坐禅講義:只管打坐への道

藤田一照 2012 佼正出版社

強為ではなく云為で坐る。坐禅は身体運動である。副題にあるとおり,道元の唱えた只管打坐とは何か,その本質を徹底的に追求した,良書中の良書です。著者の藤田禅師の言いたいことは痛いほど分かります。全面的に同意します。初心者,入門者でも坐禅の妙味は味わえるはずだし,そうでなければ坐禅ではない,という思いもよく分かります。坐禅に対する偏見を払拭したい,本来の坐禅を伝えたい。そのことを追求されている藤田禅師は素晴らしい。縁があれば,その座禅会に参加したい。まぁ,求めずとも,縁があれば会えるだろうし,縁がなければ会えないでしょう。ただそれだけです。しかし,やはり難しいのは,坐禅というものに初めて接する人にとっては,この本に書いてあることはたぶんあんまりピンと来ないのではないかと思う,ということです。坐禅をしてあれこれ考えて考えた末に,あれこれ自分なりに実践して実践した末に,あれこれ探求して探求した末に,ここに辿り着けば,この本に書いてあることは,本当に,なるほど確かにそうだ,そうそうこの感覚だ,こういうことなんだよ,というような,ためになることが宝石箱のように詰まっています。でもそれは,実践してきた人にしか,たぶん,なかなか伝わらないのかなとも思いました。坐禅とは何かを分かった上でやらないと時間の無駄になる,という本書のサブメッセージも,分かります。が,坐禅とは無縁だった人に坐禅とは何かを伝えるというのが,いかに難しいかということも改めて読んで感じます。空手も同様で,本来の空手とは何かを伝えるために,空手に対する偏見を払拭する必要があって,そうでなければ,本当の空手の良さは伝わらないし,せっかく空手(らしきもの)をやっても意味はないしと思いつつ,一体どうやってそれを伝えようかは,常日頃思い悩んでいますが,なかなか良い答えが見つかりません。試行錯誤です。藤田禅師が坐禅について目指そうとしていることと,同じだなと,読みながらつくづく思いました。でも,だから,本書は,その意味で意欲的で挑戦的な,良書中の良書です。日々坐ってる人にとっては,読んで損はない,必読書です。

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